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映画の手法でつくられたブランドムービー

野村不動産/プラウド「僕は、 父が苦手だった。」

野村不動産が2020年10月15日に公開したブランドムービー、「僕は、父が苦手だった。」。ストーリーは、獣医師の主人公 高橋正樹の元に母から、今は亡き父が書いてきた日記が届くことから始まる。日記を通じて正樹は、どこかすれ違いを感じてきた父の自分への愛情を知ることになる──。7分とWeb動画の中でも長尺な本作は、どのような意図で、どのようにつくられたのか。

新たな顧客層に向けたコミュニケーション

2002年のブランド開始以降、認知度を高め、一定の評価を獲得してきた野村不動産の分譲マンションブランド「プラウド」。その中で、近年の「顧客層の変化」が今回の動画制作のきっかけだったという。

「『プラウド』のこれまでの主なお客さまは、平均40代前半のファミリーの方々が多くいらっしゃいました。ところが近年、購入者層が若年齢化したり、DINKs(共働きで、子どもを持たない世帯)の方々や単身者の方が増えたり、といった変化が。それに伴い、その新たなお客さま層にアプローチし、需要喚起ができるようなコミュニケーションを、と考えたのが始まりでした」と話すのは、野村不動産 住宅事業本部 市場戦略部長 半田昭博さんだ。これまではテレビCMをマス向けのコミュニケーションの軸に置いてきた同社。新たな顧客層との親和性が高い媒体が必要と考え、Web動画の手法を試みることとなった。

制作にあたり、ブランドのチームではどんな動画にすべきか検討を重ねた。

「ブランディングやマーケティング、デジタルなどの担当を含む14人のチームメンバーに、『とにかく、たくさんCMやWeb動画を見て、良かったと思うものを10本ほど挙げてほしい』と声をかけました。20代前半から40代までさまざまな世代がいるチームですが、集まった動画を見ると、“ある程度の尺があり、ストーリーがきちんと構成されているもの”が多い傾向にあった。直接的にメッセージを発していなくとも、見終わると企業の言いたいことが自然と伝わってくるようなものに惹かれるんだな、と。そんな動画にしたいと、方針が固まっていきました」(半田さん)。

そこで招集されたのが、クリエイティブディレクターを務めた博報堂 岡本丈嗣さんらだ。初回の提案の前にも、打ち合わせは3、4回にわたり実施された。

「打ち合わせを重ねる中で、半田さんたちがこの動画を通じて実現したいことが明確になっていきました。それは、今の世の中における家への想いを変えたいのだ、ということ。競合との差別化というより、家を購入することへの若者の関心が薄れる世の中で、なんとなく家っていいよねと思ってもらいたい、その先にもし『プラウド』があれば嬉しい、とおうかがいしました。さらに、『プラウドのプロモーションムービーにはしないでくれ』、とも。プロモーションならテレビCMが役目を果たしているので、Web動画では観た人の心に何か気付きを与えるようなものを。そう聞き、広告的な手法から出発しつつも、コンテンツとしてブランドムービーを制作するのが適切ではないかと考えたんです」(岡本さん)。

そうして、映画の撮り方と同じ手順で制作をすることに。岡本さんを含む、映画などのコンテンツ制作に長けたメンバーが集まったチーム「カルビ」で制作にあたることになった。メンバーは、SIX クリエイティブディレクター 櫛田直希さん、岡本さんと共に映画制作の経験のある博報堂プロダクツ CMディレクター/映画監督の中嶋駿介さん、博報堂のCMプラナー 横井優樹さんらだ。

映画制作の手順でWeb動画をつくる

CM制作の場合は、まずクライアントにコンテを見せる、というのが一般的な手順だろう。一方で今回は、まず一言でストーリーを表したログラインを野村不動産に提案。選ばれたものをプロットに落として、チーム内で回し書き。岡本さんが最終的に書き終えたら、それを野村不動産側に見せる。そのフィードバックを受けてチーム内で改稿する、という作業が重ねられた。

その作業を繰り返す中で、絞られたのは最終的な「父と息子」の案を含む4案。その他にはDINKsのすれ違いや、パラレルワーカーを描いたものなどが...

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