「らしさ」と「らしくない」の間
デザイナーとして働き始めた当初の2005年頃、コンビニでとある商品を探していたとき、目に飛び込んできたのがチョコレート菓子の「ブラックサンダー」でした。手の平に乗るくらいの小さなパッケージで、黒を基調にしたカラーリング。柄のモチーフは、その名のとおり「稲妻(サンダー)」。
「金沢21世紀美術館」
Designed by SANAA
Photo by SANAA
「ルーヴル・ランス」
Designed by SANAA, IMREY CULBERT, Catherine Mosbach
Photo by Hisao Suzuki
29歳のころだったと思う。私の住む富山県のおとなり石川県に、「金沢21世紀美術館」がオープンした。デザイン道場のような、デザイン愛いっぱい・厳しさいっぱいの会社を7年で辞めて、2年ほどたった頃だった。会社を辞めてしばらくは、カフェでコーヒーを淹れたり(いずれはカフェをやりながらデザインをするのが夢で『Olive(オリーブ)』に載ってたお店に順番に行ったりしていた)、昔いた事務所のクライアントだった人の選挙事務所でお茶を淹れたり、お茶を出すのが遅いと怒られたり(どこに行ってもよく怒られていた)していた。
そこから流れで「ひとりでデザインやっていきます」と宣言をした約1年後、仲が良かった先輩と、金沢21世紀美術館に行った。元いた会社の社長には、よくデザイン以外のことも勉強しろ、と言われていた。ファッションとか、アートとか、建築とか。そっかーと思うだけでなんにもしていなかった私は、21世紀美術館を設計したSANAAのこともよく知らなかった。
いくつかある入口のひとつから入るとまっしろな空間で、チケット売り場を目指しなんとなく歩いていると、「トイレ→」という張り紙を見つけた。A4くらいのコピー用紙が、まっしろな空間に突如現れた。「建物がかっこよすぎて...