アイデアとは新しい組み合わせである
『アイデアのつくり方』(CCCメディアハウス)を初めて手にしたのは、美大受験の予備校に通っていたとき。同じ予備校で尊敬していた友人に。この本いいよ」と薦められたのがきっかけです。その友だちはアートやデザインに詳しいだけではなく、流行の半歩先を颯爽と走っているような人。感度が高く知的で、今から30年以上前に「デザインは表層的なものではなく、経済も動かす」といった話をしていたほどです。そんな友人がすすめるなら間違いないだろうと、買ってみました。
デザインの見方
29歳のころだったと思う。私の住む富山県のおとなり石川県に、「金沢21世紀美術館」がオープンした。デザイン道場のような、デザイン愛いっぱい・厳しさいっぱいの会社を7年で辞めて、2年ほどたった頃だった。会社を辞めてしばらくは、カフェでコーヒーを淹れたり(いずれはカフェをやりながらデザインをするのが夢で『Olive(オリーブ)』に載ってたお店に順番に行ったりしていた)、昔いた事務所のクライアントだった人の選挙事務所でお茶を淹れたり、お茶を出すのが遅いと怒られたり(どこに行ってもよく怒られていた)していた。
そこから流れで「ひとりでデザインやっていきます」と宣言をした約1年後、仲が良かった先輩と、金沢21世紀美術館に行った。元いた会社の社長には、よくデザイン以外のことも勉強しろ、と言われていた。ファッションとか、アートとか、建築とか。そっかーと思うだけでなんにもしていなかった私は、21世紀美術館を設計したSANAAのこともよく知らなかった。
いくつかある入口のひとつから入るとまっしろな空間で、チケット売り場を目指しなんとなく歩いていると、「トイレ→」という張り紙を見つけた。A4くらいのコピー用紙が、まっしろな空間に突如現れた。「建物がかっこよすぎて...