探求し続け 新たな方法論を見つけたい
ユニクロ、日産自動車などのグローバルクライアントのキャンペーンのアートディレクションを手がける伊藤裕平さん。その一方、落合陽一×日本フィルによる音楽会プロジェクト、子どもたちへ手洗いを啓蒙する「おれたちういるすPROJECT」など従来の広告の枠にとらわれない活躍を見せる。
2020年代のアートディレクション
「デザインあ展」「虫展」の展示構成やNHK Eテレ『デザインあ』の「解散!」などグラフィックデザイン以外の領域でも活躍する岡崎智弘さん。「デザインは構造である」と考え、メディアにとらわれずに新たな表現を模索し続けている。
グラフィックデザインからのスタートでした。東京造形大学を2003年に卒業したんですが、当時は野田凪さんや佐藤可士和さんたちが台頭してきたころで、グラフィックデザインがとてもキラキラして見えました。その憧れからデザイン事務所に入って、紙媒体の仕事をずっとしてきました。紙が好きだったんです。そして、仕事にもある程度慣れてきた2009年、自分でポスターをつくろうと思って、デジカメを買いました。たくさん撮っていると、連続した写真がつながると動いて見えることに気づいたんです。これを活かして、「グラフィックデザインに時間軸を混ぜて表現したら、何かできるかなあ」と。
翌年自分で、FlashでHPを制作しコマ撮りの映像を投稿したところ、予想以上に多くの人に見てもらえました。2011年にNHKEテレ『デザインあ』の中でコマ撮りのコーナーをつくるからやりませんかと声をかけてもらったのも、HPがきっかけ。そのコーナーが「解散!」で、僕にとって最初の映像の仕事になりました。
基本的には独学です。僕は入口がグラフィックデザインだから、最初は画面の中で何をどこに配置するか決めて、それを右に1ピクセルずらそうとか、グラフィックの考え方で映像をつくっていました。ただ「解散!」を続けていくうちに、「時間のデザイン」という概念があるとわかりました。そうなるとそのモノがどう動くか、時間軸の中でモノがどう変化し影響を生むかなど、全体の流れを考えて取り組むしかなくて。自分の手でモノを動かして、直に生体験し、勉強しながらつくっていった感じですね。
そうですね。何事も自分の目で見て、考えたり、触ったりすることがデザインに活きてくると思います。もちろん本を読んで学ぶことはできるけれど、体験したものにはかなわない。そういう工程自体が単純に面白かったりもします。CGで現実世界を構築しようと思ったら、質量・速度・摩擦などの物理法則をシミュレーションした物理演算エンジンを使います。でも、リアルで撮影すると現実世界に備わっている物理現象、物性に直にアクセスできる感覚があるんです。
特にコマ撮りのように自分の手でモノを動かしてみると、それはどういう手触りで床との摩擦はこのくらい、だからこういう動きをするということが、肌でわかります。そういう体験を通して、モノのことをできるだけ理解して、そのポテンシャルをどう引き出すか考えるようにしています。
コマ撮りは、似た絵が連続すると動いて見える「仮現運動」という原理が軸にあります。それを連続させると、1個の動きの「事象」になり...