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2020年代のアートディレクション

関係性から新しい豊かさを発見する

岡崎智弘 (SWIMMING)

「デザインあ展」「虫展」の展示構成やNHK Eテレ『デザインあ』の「解散!」などグラフィックデザイン以外の領域でも活躍する岡崎智弘さん。「デザインは構造である」と考え、メディアにとらわれずに新たな表現を模索し続けている。

SWIMMING
岡崎智弘(おかざき・ともひろ)

グラフィックデザイナー。東京造形大学デザイン学科卒業。2011年デザインスタジオSWIMMING設立。グラフィックデザインの思考を軸に視覚情報を中心とした多様な領域のデザインの仕事を文化と経済の両輪で行う。依頼者との協働のほか、分野の違いを問わずデザイナーとの協働も積極的に行う。多摩美術大学情報デザイン学科非常勤講師。主な受賞歴にJAGDA新人賞2019など。

自分の目で見て体験したことがデザインに活きてくる

──岡崎さんの代表作にNHK Eテレの『デザインあ』のコマ撮りコーナー「解散!」がありますが、最初から映像志望でしたか?

グラフィックデザインからのスタートでした。東京造形大学を2003年に卒業したんですが、当時は野田凪さんや佐藤可士和さんたちが台頭してきたころで、グラフィックデザインがとてもキラキラして見えました。その憧れからデザイン事務所に入って、紙媒体の仕事をずっとしてきました。紙が好きだったんです。そして、仕事にもある程度慣れてきた2009年、自分でポスターをつくろうと思って、デジカメを買いました。たくさん撮っていると、連続した写真がつながると動いて見えることに気づいたんです。これを活かして、「グラフィックデザインに時間軸を混ぜて表現したら、何かできるかなあ」と。

翌年自分で、FlashでHPを制作しコマ撮りの映像を投稿したところ、予想以上に多くの人に見てもらえました。2011年にNHKEテレ『デザインあ』の中でコマ撮りのコーナーをつくるからやりませんかと声をかけてもらったのも、HPがきっかけ。そのコーナーが「解散!」で、僕にとって最初の映像の仕事になりました。

「デザインあ展」体感のへや 解散!映像インスタレーション。

「デザインあ展」マークの観察 展示構成・オブジェ。

──そこから、どのように映像を学んでいかれたんですか。

基本的には独学です。僕は入口がグラフィックデザインだから、最初は画面の中で何をどこに配置するか決めて、それを右に1ピクセルずらそうとか、グラフィックの考え方で映像をつくっていました。ただ「解散!」を続けていくうちに、「時間のデザイン」という概念があるとわかりました。そうなるとそのモノがどう動くか、時間軸の中でモノがどう変化し影響を生むかなど、全体の流れを考えて取り組むしかなくて。自分の手でモノを動かして、直に生体験し、勉強しながらつくっていった感じですね。

──自分で実際に体験したからこそ、わかることも多そうです。

そうですね。何事も自分の目で見て、考えたり、触ったりすることがデザインに活きてくると思います。もちろん本を読んで学ぶことはできるけれど、体験したものにはかなわない。そういう工程自体が単純に面白かったりもします。CGで現実世界を構築しようと思ったら、質量・速度・摩擦などの物理法則をシミュレーションした物理演算エンジンを使います。でも、リアルで撮影すると現実世界に備わっている物理現象、物性に直にアクセスできる感覚があるんです。

特にコマ撮りのように自分の手でモノを動かしてみると、それはどういう手触りで床との摩擦はこのくらい、だからこういう動きをするということが、肌でわかります。そういう体験を通して、モノのことをできるだけ理解して、そのポテンシャルをどう引き出すか考えるようにしています。

──コマ撮り映像を制作するうえで意識しているポイントは何でしょうか。

コマ撮りは、似た絵が連続すると動いて見える「仮現運動」という原理が軸にあります。それを連続させると、1個の動きの「事象」になり...

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