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TCC賞2020 最高新人賞 松井一紘さんインタビュー

松井一紘(ティー・ワイ・オー)

2020年度のTCC新人賞が決定した。本年度は365人の応募者から、最高新人賞1人、新人賞19人が選ばれた。ブックオフコーポレーションの企業CM他で最高新人賞を受賞した松井一紘さんにその制作の背景を聞いた。

制作職からコピーライターに

山口県出身で、高校卒業後はイギリスに留学してミュージシャンを目指していました。帰国後、日本の大学に入ってから広告の仕事に興味を持ったのは、「ものづくりに携わりたい」という当時の思いが原動力になっています。あと留学先でお世話になった日本人の方が元CMプロデューサーで、「吉田大八さんと(同じ会社の)同期だった」と話していたんです。それがティー・ワイ・オー(TYO)のことだと気づいたのは、就職活動を始めてからでした。

活字の世界に興味があったので、当初からコピーライター志望でした。でもTYOにはプロダクションマネージャーとして入社したんです。当時は職種の違いをわかっていなくて(笑)、制作会社に入ればいつかコピーの仕事もできるのでは?と思っていました。だから入社して半年間は研修も兼ねて、制作の仕事をしていました。

そんな折、広告主との直案件を増やそうと発足した社内のチームに声をかけてもらって。念願のコピーライターとして働けることになったんです。とはいえ、まだ新しいチームだし自分も駆け出しなので実績ゼロからのスタート。競合プレゼンに勝つことに注力する日々が5年ほど続きました。

「本当に実現したい企画は自分で動かせ」

今回受賞したブックオフの仕事は、2016年ごろに始まりました。セールの告知広告などを任せてもらい、ゼロからクライアントとの信頼関係の土台を築いていけたのは大きかったです。クリエイターを信じてくれて、僕らの熱意に対して一切の守りの姿勢を見せないというか。だからいつかここぞという案件が舞い込んだら、勝負に出たいと思っていました。もうひとつ、社内の売れっ子ディレクターである佐藤渉さんと仕事をするというのも大きな目標でした。

その2つの目標が掛け合わさって生まれたのが、受賞した「ブックオフなのに本ねぇ~じゃん!」の企業CMです。元々のオリエンは、「『ブックオフには本だけではなく、洋服もスマホもある』と訴求をしてほしい」という内容でした。寺田心さんに出演をお願いしたのは、2018年の大みそかに観た『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』で芸人さんにツッコミを入れるシーンが印象的だったから。それを見て「フィクションは本だけにしとけよ~」というフレーズが浮かんできました。

一方で「本ねぇ~じゃん!」のセリフは撮影の数日前、ギリギリまで粘って書いたものです。「洋服もスマホもある」という伝えたい要素をひっくり返して、「ブックオフなのに本がない」という風に主張した方が強烈な印象が残せるのでは?と思ったんです。そこから、寺田さんが「いけないの~!?そば屋がカレー売ってるのに、本屋が服とか売っちゃ!?」と訴える「本ねぇじゃん」篇が生まれました。

さらに視点を逆転させたのが、「心を読める心くん」篇。寺田さんが男性客に「今こう思いましたね?ブックオフなのに本ねぇ~じゃん。フィクションは本だけにしとけよ~!って」と語りかけるバージョンです。

実は撮影直前、この案では実現が難しいという窮地に立たされた局面がありまして……。そのとき、僕自身が関係者の皆さんに直接、趣旨を説明しに行きました。「文案を書いただけで、営業やプロデューサーに調整を丸投げしてはいけない。本当に実現したい企画は自分で動かせ」と新人時代の上司に教わったからです。「コピーライターだからといって、コンテを書かないなんてありえない」とも教わりました(笑)。

これからも意志の強いクライアントと一緒に仕事ができたら嬉しいですね。あと自分は「敷居の低いコピー」を書けるコピーライターでいたいです。地元の高校生とかおばちゃんも誰でも気軽に口ずさんでしまうようなコピーがいい。今回の受賞で、その一歩を踏み出せたかなと思っています。

ティー・ワイ・オー
松井一紘(まつい・かずひろ)

1987年山口県下関市生まれ。ロックスターを夢見てイギリスへ留学し、帰国後に早稲田大学文化構想学部入学。2012年ティー・ワイ・オー新卒入社。現在クリエイティブ部門 SPARKに所属。受賞歴に2019年ACCフィルム部門グランプリ、OCC賞など。

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