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クリエイターが知っておきたいバーチャル表現の基礎知識と倫理観

巨大テック企業も注目 5Gの拡充とXR市場の未来予測

高橋陽一(KDDI総合研究所)

XR市場が盛り上がっている。本格展開に欠かせない5G(第5世代通信規格)が開始され、コロナ禍でXRに対する需要や期待がさらに増大している。本稿ではサンフランシスコ在住の筆者が米国におけるXR市場の盛り上がりの様子を紹介、基礎知識とともにXRの未来の姿を考察する。

コロナの影響と5Gの拡充・普及

「XR(Extended Reality)」は便利な言葉だ。ある種の「現実」への没入体験を実現する技術全般を指すもので、仮想現実の「VR」、拡張現実の「AR」、複合現実の「MR」などすべての技術を含む(図1)。それぞれ進化の途中であり、今後概念が変わり、将来新たな技術が出てくるかもしれない。

図1/XRの概念

米調査会社のIDCは2019年11月、世界のXRの市場規模が2020年には188億ドルに達すると予測した。2019年は105億ドルとされていたので、1年で78.5%という急成長となる。この予測は2020年7月にコロナ禍の影響を考慮して修正され、2019年の79億ドルから2020年には107億ドルへと、35.3%成長する見込みとなった。コロナ禍による経済停滞で一時的な減速を見込むが、2021年以降は年率76.9%の急成長を維持し、2024年までには1369億ドルに達すると予測する。

同様に米調査会社のStrategy Analyticsも、XRのハードウエアの出荷台数と売り上げが、2020年はコロナの影響で前年比20%強落ち込むが、2021年から急回復し、2025年には売り上げが2020年の6倍となる270億ドルに達すると予測する(図2)。ワークスタイル・ライフスタイルの「新常態」でXRの役割が増大し、XR市場は拡大し成長が加速すると見ている。

図2/世界のXRハードウエア売上予測

出典/Strategy Analytics/Business Wire

米調査会社のABI Researchも、コロナ禍でXRに対する需要や関心が増大していると指摘し、XRによる没入型共同作業ソリューションの市場規模が2019年には1200万ドル以下だったのが、2025年には4億ドルに伸びると予測する。

総じて、コロナ禍はXR市場を後押しし、XRの導入・普及を加速させるとの見方が優勢だ。なお、XRの内訳に目を向けると、前述のStrategy Analyticsによれば、現状はVRが圧倒的でARの存在感は小さいが、2025年には2対1かそれ以上の比率でARが優勢になると見られる。

XRの本格展開には高速・大容量で低遅延の5Gが欠かせない要素であるが、現状ではまだ5Gの提供地域や伝送速度が十分ではなく、5Gが使える端末も限られているため、現時点でのXRの活用分野も限定的とならざるをえない。

IDCによると、2019年の世界のXRの主要な活用分野は、VR映像視聴(支出額のシェアは10%)、トレーニング(9%)、ARゲーム(3%)、オンラインショッピングの商品展示(2.7%)、映画・テレビ鑑賞(2.4%)、産業メンテナンス(2%)と、産業用よりも娯楽用の方が多い。

今後、5Gの拡充・普及が進み、XRの本格展開が進展するにつれて、産業用の活用が増えると見られ、現場の組立・保全や産業メンテナンスなどの分野におけるXRの活用が大きく伸びると予想されている。

マーケティングにおけるVRの活用

現時点におけるVRの主な活用分野は...

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