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バーチャル空間への拡張で百貨店のビジネスモデルの改革へ挑む

三越伊勢丹ホールディングス「仮想・伊勢丹新宿本店」

三越伊勢丹は、4月29日から12日間開催されたVR空間上の展示即売会「Virtual Market4」に出展した。イントレプレナー制度を用いて仮想世界プラットフォーム事業を会社に提案、企画から3Dモデルの制作、そして事業化に挑戦をしている、同社 仲田朝彦さんに話を聞いた。

「仮想・伊勢丹新宿本店」。

自身の姿をスキャンし、バーチャル販売員として実際の店舗さながら接客する仲田朝彦さん。

百貨店がバーチャルに進出する勝機

「Virtual Market4(以下、Vマーケット)」は3Dアバター姿の来場者が、会場に展示された3Dモデルなどを自由に試着や鑑賞、購入できるもので、VRイベントなどを手がけるHIKKYが主催している。4度目となる今回は、企業出展ブースが集まるさまざまなコンセプトのエリアを全36会場用意。ソフトバンクやパナソニックなど43社が出展し、100万人以上が来場した。

出展企業の中で唯一の百貨店 三越伊勢丹は「仮想・伊勢丹新宿本店」をオープン。実際の伊勢丹 新宿店の10分の1スケールで再現した建物の中に、高級感溢れる店舗空間を構築した。店内では、実際に伊勢丹新宿店で取り扱いのあるブランド「NT(エヌティ)」や、「MINOTAUR INST.(ミノトール インスト)」そして「文化服装学院 専任講師の作品」の商品を3Dで制作してアバター用として販売。一部商品は一般的なECのように実際の商品も販売した。

その企画から制作までを担ったのが、三越伊勢丹ホールディングス チーフオフィサー室 関連事業推進部 仲田朝彦さんだ。Vマーケット開催時には、ヘッドセットをつけコントローラーを手に持ち、自身の姿をスキャンしたバーチャル販売員として接客にもあたっている。

仲田さんが出展を最初に会社に提案したのは、約2年前のことだった。「社内の起業制度が発足し、そこにバーチャルプラットフォームへ進出する事業を提案したんです。しかしその際は、事業の可能性や現実性を実感してもらえるような提案ができず、あえなく失敗。2度目となる今回は、事前にプロトタイプも制作した上で挑戦し、ついにチャレンジの機会を得ました」。昨年後半から、YouTubeの動画などで独学し、なんと「仮想・伊勢丹新宿本店」を自作。後輩・同僚の協力も得ながら、毎日終業後に約5時間制作にあたり、仮想空間を内製した。

仲田さんは2008年に新卒として同社へ入社後、販売員やデジタル系の計画担当として経験を積んできた。そこから、バーチャル空間での事業展開を目指したのは、大きく2つの理由があったという。「小学生の頃、SimCityという都市建設ゲームに夢中になったんです。SF映画『フィフス・エレメント』にも憧れましたね。いわゆる近未来らしい描写ではなく、あくまで現実の延長線上にあるような未来都市の姿に憧れ、それが原体験にあると思います。

もう一つは、百貨店社員としての経験からです。百貨店の主な収益モデルは、テナントへの場貸しとバイヤーが買い付けした商品の販売。中でも伊勢丹は『編集展開』という、店頭での展開の独自性に強みを持っています。バイヤーが本当に熱意をもって買い付けた品を中心に、新たな店舗体験を提供するものです。しかしこれまでの百貨店の買い付け品販売のビジネスモデルには、限界があると感じていました」と仲田さん。

小売業の営業利益率は1%~3%。例えば1万円のものを販売しても、利益は100円~300円になってしまう。「だからといって、明らかに売れる商品をそろえるだけでは、どのお店もゆくゆくは商品が画一化してしまい、独自性が損なわれてしまう⋯⋯。そんなジレンマを抱えていました」(仲田さん) ...

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