美術館の新デザイン
再開・オープンする美術館
新型コロナウイルスの影響で、多くの美術館がやむなく休館となった今年の春。夏以降、多くは事前予約制であるが、徐々に再開する美術館も増えてきた。その中には、開館を延期していたがついにオープンした美術館やVIを刷新した美術館もある。ここでは、その中から2つの美術館を紹介する。
弘前れんが倉庫美術館
7月11日、青森県弘前市吉野町に弘前れんが倉庫美術館がグランドオープンした。明治・大正期に建設され、近代産業遺産として弘前の風景を形作ってきた吉野町煉瓦倉庫を建築家の田根剛さんが改修。「記憶の継承」をコンセプトに、老朽化や経年によって傷んだ外壁を修復の上、分厚い漆喰で覆われた内壁を剥がして煉瓦に戻し、床は「赤煉瓦」で覆った。一方で、老朽化した屋根は「シードル・ゴールド」の菱葺屋根にし、光によって移ろう輝きが新たな美術館のイメージを創出している。
そんな同館のロゴをデザインしたのは、グラフィックデザイナー 服部一成さん。「弘前の[H]が上に乗り、名称の文字列の長さにあわせて伸びていくデザインです。市民の記憶が積み重なった煉瓦倉庫が、現代美術館に生まれ変わり、弘前の未来の一翼を担っていく、その時間軸をイメージした横棒と、目盛りのような縦棒で、[H]が形づくられています。色彩は、黒(無彩色)をメインカラー、赤をサブカラーとしています。中立的で汎用性の高い黒と、先進的でいきいきとした活動にふさわしく、煉瓦やりんごも連想させる赤を場面によって使い分ける計画です」とコメントを寄せている。
また、ロゴには、文字の組み方を変えたいくつかのバリエーションを用意。改行などの変化にあわせて上の[H]も伸縮し、ロゴは自在に形を変える。