クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に活かしているのか。今回は、茶道家の松村宗亮さんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。
『風姿花伝・花鏡』
世阿弥(著)、小西甚一(編訳)
(たちばな出版)
「点前にも序破急が必要だ」。師匠からその言葉を聞き、手に取ったのがこの本だ。能の技術論についての本かと思っていたのだが、ところがどっこい芸術論から教育、組織、身体、マーケティング、人生哲学などその内容は多岐にわたっていて、私にとっては座右に置く人生トラブル解決マニュアル本となった。ただ湯を沸かして茶を点てるのみ、と利休さんはおっしゃるが、その「ただ」が私には難しい。何百回と点前をし、茶会をすればするほど微妙な差異が気になり始める。
茶室を歩くその速度、お客さまに話を始めるタイミング、弟子への伝え方、マンネリ化してきた自分の茶風をどう打破するかなど、さまざまな私の悩みに対して世阿弥は多くのパンチラインやキラーワードを放ってくれる。
それは例えば...