東京から岡山に移住し、武井萌さん、武井哲史さんの夫婦で活動するFLOWERMARK。東京、岡山、長野の3拠点で働くことで見えてきたアートディレクションとは?地域の魅力とクリエイターが地域で働く意義を聞いてみた。
ライフスタイルがアイデアやデザインの仕上がりを変える
──FLOWERMARKは今年で5周年ですね。まずは独立のきっかけを教えてください
子どもが生まれて生活が大きく変わったのが一番のきっかけですね。私たちはデザインの仕事をするためにはまず自分たちの暮らしが豊かであることが大切だと感じていて、日頃どんなものを見たり、何を考えたり話したりするかが、発見するアイデアやデザインの仕上がりにも表れると思っています。その豊かさという点で、仕事、インプット、子育てをそれぞれバランス良く大切にするためには、物事をできる限り自分たちの選択で決められる生活にシフトすることが必要だと思いました。そこで独立してFLOWERMARKをはじめました。
それまでとは時間の使い方を変え、場所に捉われず私たちらしくものづくりと向き合えるライフスタイルを模索してみようと。お互いがやってきた広告づくりと商業デザインをミックスして、ジャンルを跨いだ活動ができればいいなと思っていました。
──2016年に生活の拠点を東京から岡山に移されましたが、理由は何だったのでしょうか。
先ほども触れた通り私たちの仕事にとって大切なもの、ライフスタイルの中に「子どもも親ものびのび遊べる環境」がありました。子どもの成長と私たちにとっても新鮮な気持ちで暮らせる場所を探していくうち、野山や海や自然が多く、環境・交通・文化などいろいろなバランスが私たちにとってちょうどいい岡山に移住を決めました。特に知人や所縁があったわけではありませんが、私たちがやってきた広告やデザインはいろいろな情報を整理して絵と言葉に置き換える仕事です。この頭の使い方をまた新しい場所で活用できたら面白そうだなと思っていました。
コンセプトワードが決まればビジュアルも自然と定まる
──3つの拠点で活動するにあたり、「挑戦したい仕事」はあったのでしょうか。
地域ならではのイベントや特産品のブランドづくりなどですね。新しく魅力的なものが世界中から集まって来る東京に比べ、地方は昔からの伝統やクリエイティブが根付いている場所だと感じます。民芸品などもそうですが、その土地と歴史から生まれたオリジナルのものをつくり続けながら、現代に合う形に変えて魅力を伝え続けていたり、とてもクリエイティブです。実際に岡山に生活の拠点を移してから出会ったものの中にもヒントになるものがたくさんあり、仕事にもつながりました。
岡山県産ブランドいちご「晴苺」のロゴ・パッケージデザインや、倉敷で多くの古民家再生に携わっている「仁科建築設計事務所」のCI・ブランディングなど、地域を豊かにするお仕事をされている方々との取り組みはとても刺激的。オリジナルな魅力との向き合い方や私たちのワークスタイルを見つめ直す良い機会にもなっています。