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デザインの見方

ソール・バスの寛容

菱川勢一

『アイデア別冊:ソール・バス&アソシエーツ』
(1979、誠文堂新光社)。

22歳の時、新卒で入社したレコード会社をやめて、ニューヨークに行きました。音楽の世界から、念願だった映像の世界に飛び込んだんです。映像制作の編集アシスタントとして担当していたのが、カイロンという機械。生放送の「LIVE」という表示やテロップ、映画の字幕やエンドロールなどを入力するものですね。そこでフォントのことやカーニングの方法などを叩き込まれました。

そんな仕事にのめりこんでいた時、「そういえばなんか変なエンドロールがあったな……」と思い出したのが、中学生の頃に見た『ウエスト・サイド物語』(1961)のそれでした。多くのエンドロールは文字情報が淡々と流れるものですが、この映画ではコンクリートなどの外壁に落書き風に書かれたクレジットを、ビデオカメラが順に映すつくりになっていた。

エンドロール自体がひとつの作品だったんです。すぐにVHSを取り寄せて調べ、ようやくソール・バスという人が手がけたのだと知りました。しかも、同じニューヨークにいると。でももう晩年で、その後にお亡くなりになった。すぐにでも会いに行けばよかったなぁ。

帰国後も彼のことを調べ、さまざまな本を読みました。その中でも、自宅や職場、大学の自室にも置いて、迷ったら帰ってくるのが作品集『アイデア別冊:ソール・バス&アソシエーツ』(1979、誠文堂新光社)です。ソール・バス&アソシエーツの仕事をまとめたもので、たぶん5、6冊は持っているんじゃないかな。

うちのオフィスも...

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