IDEA AND CREATIVITY
クリエイティブの専門メディア

BtoB企業のブランディング 基本の考え方とグローバル事例

不確実かつ不安な時代のBtoB企業のブランディング

中村正道(インターブランドジャパン)

2000年から毎年、グローバルで金額価値順のブランドランキング「Best Global Brands」を発表してきたインターブランド。その知見から、BtoB企業のコロナ禍のブランディング、それにともなうコミュニケーションやクリエイティブに必要な要素を解説する。

共通認識が曖昧な「ブランディング」

本論に入る前に、そもそも「ブランディング」とは何かを明確にしておきたい。なぜなら異口同音に語られる「ブランディング」という言葉の意味するものが、十人十色で千差万別、実に取り扱いが難しい言葉であると認識しているからである。インターブランドは、ブランドとは「常に変化するビジネスの資産」と定義している。

「我が社はBtoB企業だから、ブランディングは関係ない」。実際に、筆者はこれまで幾度となくこのフレーズを耳にしてきた。ブランディングとは、ネーミングやロゴによる差別化であり、広告やPRを活用したイメージアップ戦略であり、トータルなコミュニケーション活動のことである。これらがいまだ多くの日本の、特にBtoB企業におけるブランディングの認識であり、ブランディングは事業戦略の一部である「マーケティング」の延長上の「施策」と位置づけられている。

しかし、この認識は、決してグローバルスタンダードではない。グローバルのリーディングブランドは、ブランドを事業戦略と一体の関係として位置づけ、ブランドが組織全体の活動をドライブするという考え方に立っている(図1)。「ブランディング」はすべてのビジネス活動を総動員して、顧客の意思決定に影響を与えることで、資産としてのブランドの価値を最大化させる、組織の持続的な成長のドライバーである。

図1/2つのブランディング

出典/インターブランド

BtoB企業もブランド価値の上位に

インターブランドは、「ブランド価値」を、ブランドによってもたらされる「経済価値」と定義し、2000年から毎年グローバルでTop100の金額価値順のブランドランキング「Best Global Brands」を発表している。

2019年秋に発表した直近のランキングでは、BtoB企業はIBM(12位)、Intel(13位)、Cisco(15位)、Oracle(18位)、GE(19位)、SAP(20位)が上位にランクインし、上位20位内の6ブランドはBtoB企業である(図2)。

図2/Best Global Brands 2019

出典/インターブランド

「ブランド価値」は、ブランドによって将来的に生み出される利益の割引現在価値である。評価の分析項目のひとつである「ブランド強度」(図3)は、ブランドのマネジメント体制を評価する4つの社内指標(概念明瞭度・関与浸透度・統治管理度・変化対応度)と、ブランドが顧客にどう捉えられているかを評価する6つの社外指標(信頼確実度・要求充足度・競合差別性・体験一貫度・存在影響度・共感共創度)から構成され、ブランド強度が高ければ低い割引率を、低ければ高い割引率を適用し、将来のブランド利益の割引現在価値の合計として、ブランド価値が算定される。

図3/ブランド強度スコア

出典/インターブランド

つまり、評価手法は「すべてのビジネス活動を総動員して、顧客の意思決定に影響を与えることで、資産としてのブランドの価値を最大化させる」という考え方を反映している。

Ciscoは3年間でブランド価値が11%増

ビジネス活動を総動員して、資産としてのブランドの価値を向上させることに成功しているBtoBブランドの例として、Ciscoの活動を「ブランディングの3要素」で考察したい。

ブランディングの3要素とは、BEIT(確かな評判をつくる一貫したブランドの考え方・活動指針)、DO IT(活動指針に則り顧客ベネフィットを生み出す一連の事業活動)、SAY IT(一連の活動を顧客の頭の中に蓄積させる顧客体験)であり、これらを掛け合わせた取り組みがブランディングである(図4)。

図4/ブランディングの3要素

出典/インターブランド

Ciscoは2018年にブランドプロミスとビジョンを策定するとともに、新しいブランドロゴを発表した。ブランドプロミスは「We make amazing things happen by connecting the unconnected.(つながっていないものをつなげることで驚くようなことを起こす)」(=BE IT)。

また、働き方、暮らし方、遊び方や学び方を変えることを目標にWebexをはじめとしたネットワークソリューションやセキュリティ、IoTやデータセンターなどの事業活動を展開(=DO IT)。同時に、「The Bridge to Possible」というブランドキャンペーンをグローバルに展開し(=SAY IT)、2017年から2019年の3年間で、ブランド価値を11%も増加させている。

危機下でも迅速に行動・発信したSAP

COVID-19の感染拡大によって、平常時に戻ったとしても顧客の意識はもう元に戻らないだろうと言われ、パーパス(存在意義)が明確な企業ほど迅速に顧客に訴えうる行動がとれる、ということに注目が集まっている。

SAPは、約50年前に「世界をより良くし、人々の生活を豊かにする」という非常に明確な目的のもとに設立された企業である。今回の危機に直面し...

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

BtoB企業のブランディング 基本の考え方とグローバル事例 の記事一覧

不確実かつ不安な時代のBtoB企業のブランディング(この記事です)
グローバルBtoB企業に見る「パーパス・ブランディング」考

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
ブレーンTopへ戻る