『ジョジョの奇妙な冒険』やRADWIMPSのOOH、Y!mobile「ふてニャン」のキャラクターデザインなどファンはもちろんファンでない人からも注目を集めるアートディレクションを行ってきた博報堂 榮良太さん。「アイデアの核となるビジュアルをつくりたい」と考えている。

博報堂 榮良太(さかえ・りょうた)
武蔵野美術大学テキスタイルデザイン学科卒業後、博報堂入社。インパクトのある一枚絵を武器に広告のアートディレクション、ブランディング、ロゴやパッケージなどのグラフィックデザインを手がける。東京ADC賞、JAGDA新人賞、NYADC賞など受賞。
気持ちよく裏切るビジュアル
──この10年間でご自身を取り巻く環境で変化を感じることはありますか。
最近は媒体がずいぶん増えていて、追いつかなくなっていますね。Twitter、Instagram、YouTube、TikTokと「媒体ごとにどういうビジュアルが効くか」というのはありますが、あまり細かいことを考えてもわからないのが正直なところです。媒体が多様化しても必要なデザインは変わらないと思っているので、よりシンプルに、太いコミュニケーションをしていったほうが伝わると考えています。だから、ビジュアルの強さには、いつも気を付けています。
──強いビジュアルにするために何を大切にされていますか。
意表を突くことは意識していて、常に人の期待を良い意味で裏切りたいという気持ちがあります。裏切るといっても、気持ちよく裏切ってあげることが大切です。たとえば、2010年6月にRADWIMPSがシングル「マニフェスト」と「携帯電話」を同時発売したときは、その歌詞だけを大きく配置し、他の要素が一切ないOOHを渋谷や青山に出しました。
「RADWIMPSなら歌詞の力だけで伝わるだろう」と最初にピンときて、RADWIMPSの名前すらない広告に仕上げたところ、「あれは何だ、何の言葉だ」と話題になりました。RADWIMPSだからこそ生まれた企画だし、ファンの方にも受け入れられたのだと思います。ポスターはゼロコンマ何秒しか見られないと言われる中で、どれだけインパクトをもって見せられるかは常に勝負です。

RADWIMPS「マニフェスト」「携帯電話」OOH。
──国立新美術館「荒木飛呂彦原画展JOJO冒険の波紋」(2018)に合わせて、展開されたOOHも印象的でした。
『ジョジョの奇妙な冒険』の仕事は、何度かやらせてもらっていて、新宿メトロプロムナードのそのOOHが最新です。第1部のジョナサン・ジョースターから第8部の東方定助までの8人のキャラクターをジョジョの代表的な擬音であるドドドだけで表現した「ドドドWall」をつくりました。「国立新美術館で展覧会がある」というざわつきを「ド」の文字だけで表現しています。普通に絵を描くのではなく文字で描くことで、意表を突いたのがひとつ。また、ジョジョの代表的な擬音「ドドド」を使うことで、ファンから見ても面白いと思ってもらえるものを目指しました。
同時に...