カミソリに代表される刃物を中心とし、調理用品や化粧道具、衛生用品を製造・販売するメーカーである貝印。一般消費者だけではなく、プロに対しても提供をしてきた。コロナ禍において、ステークホルダーに対してどういったコミュニケーションを行ったのか。
スピーディな変化に対応できる体制
総合刃物メーカーである貝印は自粛中の在宅時間を楽しく過ごせるように、4月末から同社商品を活用した特別企画「#貝印おうちチャレンジ」を実施した。第一弾は包丁のスペシャリストによる包丁研ぎの生配信、第二弾は猫をモチーフにしたデザイン調理小物の「Nyammy ねこのサンドイッチ型」を使った有名インスタグラマーによる猫の肉球型のサンドイッチづくり、第三弾は料理研究家リュウジさんが「鋏だけでできる包丁を使わないオリジナルレシピ」をTwitterで紹介するなど、バラエティに富んだ内容になっている。
この企画がスタートした背景には、新型コロナウイルス感染拡大によるニーズの急激な変化があった。貝印の広告クリエイティブの指揮を執っているGREAT WORKS チーフクリエイティブオフィサー兼 貝印 広報宣伝部部長の鈴木曜さんは「コロナ禍でオフラインイベントができない、オンライン購入が増えるなどの大きな変化が起こっているのに、コミュニケーションが以前と同じままではいけないと思いました。世の中は商品を売る雰囲気ではなかったので、貝印の商品を使って、家にいるからこそできることを打ち出そうと考えたんです」と振り返る。
今回なによりも意識したポイントは、急に発生した世間のニーズに対してスピーディにコンテンツを提供することだった。「その点、貝印は一昨年から広報部と宣伝部のトップを外部クリエイターである私が務めていることもあり、スピーディにクリエイティブを決定できる体制になっていました。通常の企業のエスカレーション方式だと、広告会社から提案があり、そこにどう予算を割くかという流れになります。しかし貝印はこういった体制だからこそ予算配分なども柔軟に変えることができ、お客さまの状況を考えて、社内で実行できるのが強みです。お客さまにとって本当に必要なコンテンツを出すことができる体制と自負しています」。
今回も社内ではカテゴリごとの予算は事前に決められていたが「そんなものに左右されていたら旬を逃してしまう」と鈴木さんは判断し、フレキシブルに変更している。「世界が急激に変わった現在は、企画から実施までの速度が求められます。クオリティも大事ですが、今回はスピード感を重視しました」と鈴木さん。
企画を考える際に意識したことは...