クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に活かしているのか。今回は、段ボールで財布をつくるアーティスト島津冬樹さんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。

ターベルコース・イン・マジック全8巻
ハーラン・ターベル(著)、加藤英夫(訳)
(テンヨー)
この本を知ったのは、マジシャンを目指していた中学時代に読んだ本に、ターベルコースを読まずしてマジシャンならず、とあったからだ。早速欲しくなるも一冊が6000円~と大変高価な本だった。クリスマスや正月にプレゼントしてもらいながらやっと8巻まで揃った時の達成感は今でも忘れられない。
全巻を通じて何百種類というマジックが基礎から応用まで載っている。それだけではなく、マジシャンとしての心得や生き方、自分を売っていくには、そんな内面的な姿勢も含めて伝授されているところはまさにバイブルにふさわしい書物だろう。
学校から帰るとこの本と鏡とトランプを手に、マジックの練習に明け暮れた。そして翌日、マジック道具をカバンに詰めて学校で披露する。マジックに飽き飽きする友だちに無理やり見せては腕を磨いていった。今思えば僕にとって学校はマジックを披露する場だったのだ。