テクノロジーとデザインで日本のDtoCブランドを支援するブランディングエージェンシー、フラクタ。今回、同社が手がけた前原光榮商店のEC事例から、その取り組みを見ていきたい。
老舗傘ブランドのECリニューアル
フラクタは長年にわたりブランド事業者のECブランディング支援を続けており、業界トップクラスの知見と実績が蓄積されている。そんなフラクタが最近リニューアルを手がけ、高い効果を発揮しているECのひとつに、「前原光榮商店」がある。同店は皇室をはじめ著名な人々に愛されている老舗の洋傘ブランドだ。
そのECサイトのリニューアルに当たったのが、転職でフラクタに入社して1年目のディレクター 高橋友花さんと10年目のキャリアを持つアートディレクター 城島睦さんを中心としたチームだ。依頼を受けた背景について、高橋さんは「弊社は土屋鞄製造所さんなど職人がつくる商品ブランドのECをこれまで多く手がけてきた実績があることから、今回お声がけいただきました」と話す。
リニューアルを進めるにあたり、二人が最初に実施したことは、徹底したヒアリングで課題を洗い出すことだ。「当初のサイトでは顧客が傘の手元を選ぶことができるオプションやギフトのオプションにたどり着けない。メインの購入者層が40~50代と高いこともあり、コンテンツの説明文があまり読まれていないなど、さまざまな課題がありました。それに加え、若年層にも興味をもってもらいたいというご要望もありました」(高橋さん)。ヒアリングの結果、商品動線の強化、デザイン改善、ブランドの魅力発信の充実度を高めることなど、課題は多岐に渡っていた。
洗練された高級感と、親しみやすさを備えたサイトデザイン
これらの課題をもとにフラクタは最適なプラットフォームの提案から動線の設計、コンテンツの改善、デザインディレクションまでを行っている。
コンテンツの改善で重視したのは、「実店舗の接客体験をどのようにECに実装するか」ということだ。「前原光榮商店さんは傘のスペシャリストとして、実店舗でとても丁寧に接客しています。例えばご年配の方には持ち運びの負担が少ない、軽くて丈夫な傘を勧めるなど、そのお客さまに適した傘の選び方をご案内しているんです。そのため、ECでも実店舗と同じような接客を実現し、さらに傘の魅力を伝えていきたいと考えていらっしゃいました」(城島さん)。
そこで2人は同商店からさまざまな接客のポイントを教えてもらい、それを元にコンテンツページを制作している。提案した内容に対して前原光榮商店が現場の知見をもとにアップデートするという形をとりながら、傘の魅力を伝えるとともに、豊富なオプションもわかりやすくサポートする役割も持たせた。
デザイン面ではサイト全体のデザインに加えて、キービジュアルの撮影もディレクション。「キービジュアルの撮影では前原光榮商店さんと現場で意見を出し合いながら進めました。当初、私たちは"傘らしさ"のある商品全体のカットを提案したのですが、前原光榮商店さんのアイデアにより、傘の手元や骨をアップで撮影するなどしています。老舗であることも大切にしながら新しさを出すことを意識しました」(城島さん)という。
サイトデザインでこだわった点は"親切さ"に加え、高級感とスタイリッシュさも表現すること。「親切なつくりを大切にしながら、スタイリッシュなサイトデザインを目指し、温かみはあるけれど高級感を損なわないようバランスを心掛けました。また、最近のECは"写真次第"と言われがちですが、サイトデザインを手がける際は、そこに逃げないようにして、必ず何か見てもらえるポイントをつくるように心がけています」(城島さん)。
リニューアル後、ECサイトからの売上が向上し、「わかりやすくなった」と好評を得ている。今回のプロジェクトについて高橋さんは「フラクタが長年培ってきたECの知識、城島のWebデザイナーとしての知見、そして前原光榮商店さんは傘のスペシャリストとして内側からしかわからないところをフィードバックや提案をしてくれるなど、それぞれの役割分担がうまく機能したプロジェクトだったと思います」と振り返る。
城島さんは、この仕事では"フラクタならではの価値"を生み出せたと考えている。「フラクタでは以前からクライアントも一緒にひとつのチームになり、同じ意識で仕事を進めることを大事にしてきました。今回もフラクタならではのチームづくりで進めることができました」。ECを核としながら、そのブランドのマインドをもしっかりと伝えていく──それを体感できるECサイトが完成した。
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