大塚製薬が、4月からオンエアを開始したポカリスエットの新CM「ポカリNEO合唱」篇。新たなヒロイン・汐谷友希さんと97人の中高生が10代のかけがえのない“今”をそれぞれが自分らしく歌い、その映像を1つのコンテンツとして編集している。このCMは、97人の出演者各自が自撮りした映像で構成されている。

4月にオンエアを開始した「ポカリNEO合唱」篇。現在TikTokを使って、それぞれの場所で、自分らしく表現した歌唱動画を「#ポカリNEO合唱」のハッシュタグをつけて投稿してもらう「#ポカリNEO合唱」ミュージックビデオオーディションを実施中。

5年間の経験が生きた「代替案」
大塚製薬では2020年春のオンエアに向けて、昨年秋から企画がスタート。そして今年1月に決定したのが、約500人の中高生が一堂に集まって歌う「NEO合唱」という企画だ。これまでのダンスから一新、10代の出演者が「自分が楽しいと思うことを自由に表現し、共に歌う」新しい合唱のかたちを、「NEO合唱」と命名。新しいCMのキャッチフレーズは、「渇きを力に変えてゆく。」。マイナスをプラスに変えることができるという、力強いメッセージだ。
それが自撮りという撮影手法になったのは、やはり新型コロナウイルスの感染拡大による。大塚製薬 宣伝部 課長 上野隆信さんは「企画が決まり、2月下旬にいよいよ中高生を集めて合唱のリハーサル(全体練習)を始めるところでした。ところが新型コロナウイルスの影響で、練習が難しくなってしまいました」と振り返る。結果、リハーサルを中止したが、4月の放映枠は変わらない。そこで、上野さんはクリエイティブスタッフに企画の変更を打診した。
CM放映まで約1カ月のタイミングで企画変更の話を受けた、なかよしデザイン クリエイティブディレクター 正親篤さんは「想定内でした」と話す。「2月下旬にロケハンをした際に、僕らはこの状況で撮影を進めてはいけないんじゃないかと話し合っていたんです」。企画変更決定後の3月1日、正親さんはCMディレクター 柳沢翔さんと「リモートでできる企画はないか」と打ち合わせを行っている。
その際に今回の打開策の起点になったのは、電通 デジタル・クリエーティブ・ディレクター 眞鍋亮平さんが以前から温めていたアイデアだ。
「ポカリスエットの仕事ではこれまでMixChannelやTikTokを通じてダンス動画を投稿してもらい、それを編集したCMやWebムービーを制作してきました。こうした積み重ねもあり、企画当初の大人数が集合する合唱とは別に、学生のみなさんが歌う姿を、スマホで自撮りした映像を集めて一つの合唱にするという企画を考えていました。夏に向けて実施できればと正親さんとは話していたんです」(眞鍋さん)。正親さんと柳沢さんはこの企画を前倒しで実現することで、問題解決と期限内の制作の両方を実現できると判断した。
練習用の丁寧なガイドビデオを制作
自撮り合唱の企画が固まった後の柳沢さんの動きは早く、2日後の3月3日にはスタッフが演じたVコンを完成。正親さんたちはそれを持って、大塚製薬に新しい企画を提案した。新たな提案を受けた上野さんは「このチームで5年間仕事をしており、これまでにも投稿動画を使ってCMまで完成させていた経験があるので、信頼していました。逆に言えば、もうそれしか方法はないだろうとも思いました」と話す。そして...