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楓セビルのアメリカンクリエイティビティ NOW!

ポップアップ・エコノミーに湧く米国ニューヨークの話題のポップアップ

楓セビル

“ポップアップ”ストアが流行っている。全米のあらゆる場所に雨後のタケノコのように増え、“ポップアップ・エコノミー”と呼ばれる現象が起きている。流通業コンサルタント会社RetailNextによると、いま米国のポップアップ・エコノミーは、年間5000万ドルのビジネスに成長しているという。

なぜポップアップか?

ニューヨークやロサンゼルスの繁華街を歩いて気がつくことは、空き家になっている店舗が多いことだ。ここ数年、ニューヨークやロスなど都会の不動産の価格がうなぎ上りで、家賃高騰のために倒産する小売業やレストランが増えているからだ。その反面、消費者とブランドとの接点を持たないオンラインビジネスは、それを獲得するための手段として、オフラインの店舗に興味を持ち始めた。だが、巨額な投資を必要とするオフラインへのベンチャーは、消費者動向に関する知識を持っていないオンライン・ネイティブにとっては危険である。

そこで、温度を知るためにつま先を水に入れてみるように一時的な店舗を開く。つまりポップアップである。ポップアップは、予算に関係なく、あらゆる種類のビジネスやブランドが生の顧客と接触できるチャンスをつくってくれる。ただし、それには集客力が必要だ。ポップアップの多くが、来館者を視覚的に、またはアイデアで喜ばせる工夫(例:カラーファクトリー)や、テクノロジーを使ったイノベーティブな工夫(例:ナショナル・ジオグラフィック・エンカウンター:オーシャン・オデッセイ)、面白いテーマ(例:Museum of IceCreamやRoom For Tea)などで話題になることを狙っているのはそのためだ。

ポップアップのもう1つのメリットは、ミレニアル世代消費者に多いFOMO(fear of missing out=チャンスを逃すのを恐れる心理)を掻き立てることだ。彼らは「いま見ておかないとまもなく消えてしまう!」「いま買っておかないと買えなくなる!」といったFOMO心理が働き、ポップアップストアに馳せ参じるのである。

このミレニアル世代の心理的傾向を駆り立てるには、毎年決まった時期、場所にポップアップストアを出すことで効果が増す。この手法で成功しているのが、毎年12月にブルックリンの倉庫街に登場する「29Rooms」というアートイベント。2019年は12月6日にオープン。多くのリピーターを集めている。

NYの三大ポップアップ

現在、ポップアップが何店ニューヨークに存在しているかを知るのは、その性格上、簡単ではない。オープン、クローズを繰り返しているのが常だからだ。だが、「少なくとも2ダースに近いポップアップが常時消えたり生まれたりしているはず」と、不動産業者ジョン・エンゲルは言う。ここに紹介するのは、そういったポップアップの中でアイデア、テクノロジー、イノベーション、そしてクリエイティビティで群を抜いているポップアップ・イベント、そのために定着を予測されているポップアップである。

カラーファクトリー(Color Factory)

ニューヨークの2019年の最もホットなポップアップ、カラーファクトリーは、いわゆる体験型の展示で、さまざまな色や形との双方向性体験を楽しめる。2017年にサンフランシスコで最初にオープンし、大成功を収めた。そこで、2018年の夏に、NYに住むアーティストやクリエイターたちのアイデアを導入し、サンフランシスコより大掛かりで多彩、イノベーティブなイベントにつくり変えてオープンした。

館内にはいろいろな工夫やテーマを持った16の部屋がある。例えば色とりどりの風船のある部屋、入り口でもらったカードをスキャンすると自動的に訪問者の写真を撮り、直ちにその人へE-mailを送ってくれる装置、簡単なテストで来館者の本来の“色”を教えてくれる部屋、“ソールカラー”と呼ばれるダンススタジオ。この部屋の床は、動きに合わせて色が変わる仕組みだ …

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