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グッドデザイン賞2019 受賞結果レポート

社会や人との関係性の手がかりになるグッドデザイン賞

柴田文江(審査委員長)

国内外から集まった応募作品4772件。令和初のグッドデザイン賞の受賞数は、過去最多の1420件に及ぶ。本賞を選出するにあたり、どのような審査が行われたのか。

審査委員長 柴田文江(しばた・ふみえ)
武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業後、東芝を経て、デザインスタジオエスを設立。エレクトロニクス商品から日用雑貨、医療機器、ホテルのトータルディレクションまで、インダストリアルデザインを軸に幅広い領域で活動をしている。毎日デザイン賞、グッドデザイン金賞など多数受賞。

審査テーマは「美しさ」と「共振力」

──2019年の審査で掲げた方針を教えてください

デザインの領域が広がり、あらゆる取り組みがデザインと言える今、「それがグッドデザインであるならば何かしらの『美しさ』がある」という思いから、「美しさ」をテーマに掲げました。今回はそれに「共振力」を加え、「美しさ」と共に審査のテーマとしました。

共振力を掲げたのは、今の時代は問題も社会も複雑化しているため、ひとつの方法だけで課題を解決することは難しいですし、プロジェクトが生まれ、開発を進める過程でどのような出会いがあり、そこでの関係性を築いていったのか。完成後に周囲の人、社会にどのような影響を与えるのか。こうしたものを「共振」と考え、そういうことをグッドデザインというのではないかと考えたからです。

私たち審査委員はグッドデザイン賞が良い社会、良い未来につながるようにファシリテーションしていくことも大事にしています。デザインが実際に社会とどのように関係しているのか、どのような未来を提示しているのかといった面から審査を行いました。

──大賞に選出されたのは、富士フイルムでした。

グッドデザイン賞はベスト100のプレゼンテーションすべてを審査委員が聞きます。今年の大賞候補であるファイナリストは富士フイルムの「結核迅速診断キット」、ソニーの「Ginza Sony Park」、良品計画の自動運転バス「GACHA」、福島県いわき市役所の地域包括ケア「igoku」、富士通の音を振動で感じ取る新しいユーザインタフェース「Ontenna」の5作品でした。大賞を受賞した富士フイルムは主力であったカメラ事業とは異なる医療機器の領域から生まれています。

今年は富士フイルムの商品が多数、金賞以上にノミネートされていることからも、社内でどういう共振が起こったのだろうかと興味が湧きました。個人的にはソニーパークにも注目していました。ビジネスの観点で考えると銀座のあの場所は、商業施設やオフィスビルを建てるといった別の方法もあると思いますが、あえて「変わり続ける公園」をつくった。これはまさに企業の良心のようなものを感じるプロジェクトですよね …

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