編集部が街で気になった様々なデザイン
BOOK
高橋ユキ著『つけびの村』
(晶文社)
- 装丁/寄藤文平
『つけびの村』は、2013年に発生した山口連続殺人放火事件について取材したノンフィクション。Webサービス「note」で公開され、話題を集めた作品だ。本書の装丁の依頼を受けた寄藤文平さんは「noteからの書籍化という、これまでとは違う出自のノンフィクション。その新しい気分を装丁で表現したいと考えました」という。
寄藤さんは、これまでとは違うアプローチで本書の装丁に挑んだ。「最近、個人的にSVG(スケーラブル・ベクター・グラフィックス)というプログラムの形式について勉強していて、そこで出会った感覚を取りいれてみることにしました。図形や配置をプログラム用言語や数値だけで表していくと、独特の"無味無臭"な画面ができるんですよね。モニター画面ならではの清潔な質感といいましょうか。現代のノンフィクションの新しさや気分を、その質感で表現できないかと考えました」。
そうして仕上がった装丁は黄色の地で明るい印象だが、「どのジャンルの」「誰が作った」「何のための」といったニュアンスが感じられない。「ノンフィクションを読む経験として、新しい提案ができたのではないか」と、寄藤さんは話している。
CD
ROTH BART BARON『けものたちの名前』
(felicity)
- AD+D/近藤一弥
- I+D/筒井萌
ROTH BART BARONの新譜はタイトルを象徴するかのように、不思議な絵が描かれている。「デモ音源を聴き、メンバーが書いたステートメントを読んだときに、何か現実とは違う、隣接したもうひとつの世界につながる入り口のようなものを想像しました」と、アートディレクションを手がけた近藤一弥さん。
そこで近藤さんは、フランス語圏の漫画「バンド・デシネ」で描かれている惑星の風景などを参考に異世界のビジュアルを考えたという。「でもライブで聴くうちに、もう少し熱量のある、鮮烈な世界も同時に現れるようなものにしたい …