クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に生かしているのか。今回は、第6回BOVAグランプリ「結婚できないひと」の監督で12月6日には、自身初の長編映画『ゴーストマスター』が公開される映画監督 ヤング・ポールさんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。
『映画はおそろしい』
黒沢清(著)
(青土社)
「人間が描けていない」というシンプルかつ真実味がありそうな言葉で作品が貶されることがある。作品から満足感を得られなかったのならば、この一言を放っておけばとりあえず(ホッ・・・)と落ち着ける。作家は、人間を描かねばならないし、映画は人間を描くものである。だが、本当にそうだろうか。本書の終章「人間なんかこわくない」において、映画監督である筆者黒沢氏は告白する。私は思慮に富んだ立派な人間でもないし、人間を深く描くことには本来興味は無いのだと。そして映画の「もっともらしさ」についての言葉が連なる。
私が20代に差し掛かった頃、この文章に救われた気がした。本書は黒沢氏が諸媒体にホラー映画、ドラクエ、サンダンス映画祭などについて雑多に書いたものを纏めたものである。「あとがき」で自ら述べているが原稿の依頼を受け考えながら文章を書いているようで、主旨がヨレたりある種のテキトーさも垣間見える …