横長のテレビ画面の中に、常に縦長のLINE画面だけが映し出される不思議なテレビ番組『とある金曜日、LINEの中で』がTOKYO MXで9月に放送された。LINEのトークルーム内だけでストーリーが進む、女4人の友情ラブコメディを描いたワンシチュエーションドラマに、若い世代が注目した。
閉鎖された空間での会話劇
この企画のはじまりは、電通 コンテンツビジネス・デザイン・センターの橘佑香里さんが、MXの毎週金曜23時30分~24時の30分枠を持つソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)から依頼を受けたことにさかのぼる。
「この枠ではジャンルを問わず、さまざまな番組をオンエアしています。映像監督やクリエイターなど新しい人材を発掘する目的もあるようで、今回は"予算は限られているけれど単発ドラマをつくりたい"というお話をいただきました。そこで、以前から"ドラマをつくろう"という話をしていた、クリエーティブディレクターの中尾孝年さんに声をかけました」。
SMEが望んだのは、「これまでに見たことがない面白いものをつくりたい」ということ。それ以外の条件は、かなり自由度が高かった。それを聞いた中尾さんは「そういうタイプの仕事は、自分が一番得意とするところ(笑)。予算は限られているけれど、僕は広告クリエイターだから制限があるほうが考えやすいし、規制を逆手にとるのも得意です」。中尾さんがこれまで低予算でCMを制作した経験と、橘さんのドラマプロデューサーとしての経験を重ね合わせて企画を考えた結果、「閉鎖されたワンシチュエーション会話劇」という方向性が見えてきた。
会話劇の場をLINEにした理由は、誰も見たことがないこと。そして、放送時間帯的に若者がターゲットであるため。「彼らにとって一番身近な閉鎖された空間での会話を考えると、それはLINEでした。隣の人ともLINEで話すような世代だから、舞台をLINEの中だけに制限したほうが面白くなる。またLINEには、独特の文法とリズムとルールがあるので、それをきちんと守れば、若い子が見たときに共感してくれるものになると思いました」(中尾さん) …