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デジタルと対立するのではなくマルチパーパス&データドリブンで紙の新たな可能性を切り拓く

岡本幸憲(グーフ)

街中にサイネージが増え、DOOH(屋外デジタル広告)が目に留まるようになった昨今。ポスター、DM、チラシなど紙メディアに触れる機会が減りつつある。そんな中、「残るべき紙の形は当然ある、使い方が変わってくるだけ」と話すのは、第34回全日本DM大賞審査委員であり、デジタルとプリントメディアを結ぶべく、活動をするグーフ代表取締役 岡本幸憲さんだ。

グーフ 代表取締役 岡本幸憲(おかもと・ゆきのり)
1965年東京都生まれ。印刷業界に転職。米国在住時に数々のIT/Web関係の事業開発プロジェクトに携わり、31歳で帰国。デジタルと紙の融合で高付加価値なコミュニケーションの実現を目指し、15年間印刷業界に身を置きながらデジタル印刷を活用したサービスを多数プロデュース。2012年、「すべてのテクノロジーやデータと繋がる紙」をミッションにgoofを共同創設。デジタルと同等の運用でプリントメディアを活用したいブランドオーナーと、印刷工場を合理的に繋げる支援を提供している。第34回全日本DM大賞審査委員。

紙メディアの"配布しやすさ"や"保存性"を共感につなげるクリエイティブ

──「すべてのテクノロジーやデータと繋がる紙」がグーフのミッションですね。

2012年にグーフの前身であるプルキャストを創設したのは、印刷メディアを、ユーザーであるブランドオーナーやクリエイターにとってもっと使いやすいものにすることが目的でした。印刷業界のルールをテクノロジーによって破ってあげれば、もっと面白い使い方、もっと良い機能が紙に追加されるだろうと思ったのです。

以来、デジタル印刷の可能性に着目して20年以上活動する中で、「紙は難しい」というユーザーの声を聞くうちに、印刷の基礎力を持っていない人がデジタル手法を生かそうとしてもハードルが高いのだと気づきました。そこで、サプライヤー側である私たちから「印刷にはもっとこういうことが出来る」という可能性やアイデアを提示しながらユーザーと印刷会社をつなぐことに力を入れることに。

いまも、印刷周辺のデジタルテクノロジーの上流の方々に対してサービスを提供することで、印刷工場がより多様性を持ち、クリエイターがシステムやデータとのコネクティビティにより今までに出来なかった紙の使い方に目覚めるお手伝いをしています。紙vsデジタルという対立構造に疲弊し始めている人たちが少なくないようですが、両者が歩み寄ってデータドリブンで両方やったほうが生活者にとって喜ばれるコミュニケーション設計が実現できると思いますし、よいエコシステムが生まれるような気がします。

──ここ数年、紙メディアに起こっている変化について、どう捉えていますか?

昨今はSDGs的な考え方も広まっていますので、8兆円以上あった紙消費量が維持されることには反対ですが、残るべき紙の形は当然ある、使い方が変わってくるだけ、というのが私の信念です。仮に、駅前に屋外広告を出すと想定した時、マルチパーパスで考えるといろんなことができますよね。

帰属性やリテンションなどマーケティング効果を優先するなら、例えばタグなどを織り込んでDOOH(屋外デジタル広告)と連動させたB2サイズの紙を刷る。それを特定のスポットに行けば好きなだけもらえることにするというようなトリガーに使えば、B全の駅貼りドーン!とは違ったポテンシャルが出せるかもしれません。デジタルの台頭でコネクティビティが高まり、生活者によりダイレクトなコミュニケーションが維持できる時代になったからこそ、紙メディアの"配布しやすさ"や"保存性"を共感につなげるクリエイティビティが試されているような気がします。

すでに出版業界には、雑誌と通販をクロスさせる「雑誌 2.0」という試みにチャレンジする会社が出てきています。紙媒体で培ったコンテンツの企画力、デザイン力、編集力をフィーチャーすれば、ファッションカタログひとつでも、より柔軟でパーソナルなものに変えられます。

DMは"ドア・オープナー"として大切なツール

──海外で数多くの事例を見てこられたと思いますが、日本との違いは何ですか?

日本ではスマホで写真を撮ってもSNSにアップすることが最終目的になっている感がありますが、海外では写真データに盛り込まれている情報を利活用する動きが広まりつつあります。人工知能をかませることでその人の生活パターン──よくゴルフをする、家族で海外旅行に行く、スイーツが大好きといった傾向を分析し、通販商品への同梱物やWeb広告のリードをレスポンサイズするといった具合です。

例えば電子決済で滞留しているポイントを使って、写真データをプリクラやポストカード、フォトブックなどに加工できるとしたらどうでしょう。『チェキ』が若い世代の間で盛り上がっていることからもわかるように、感覚的に撮った写真であってもポストカードなどフィジカルなかたちで残して誰かと共有できるものにすることで、コミュニケーションツールとして機能します。デジタルのオブジェクトであっても、体感・共感メディアとして強い紙メディアと組み合わせることで、企業が生活者に新たに関与できる余地が生まれるかもしれません。

──DM(ダイレクトメール)の役割も変わっていくのでしょうか?

デジタルDM、紙のDM、ともに"ドア・オープナー"として大切なツールのひとつです。ただしデジタルDMの場合はお客さまが能動的に動かない限りリーチしません。また、パーソナライズという点で有利な半面、販促狙いのコミュニケーションになりがちで、真のブランドコミュニケーションにつながっているかというと、慎重に見極める必要がありそうです。

一方、紙DMはお客さまとの帰属性を維持、向上させるツールとして有効だと思います。しかし、最近は圧着ハガキに割引クーポンが印刷されているようなものが多いせいか、DM=ハガキ、大量印刷をばらまくというイメージが強くなっており、サプライヤ側としては少々辛い状況です。封書で送ることが絶対的に良いとは言いませんが、昔ながらの"ていねいさ"を大切にすることで「販促ツールをつくる」という感覚から「心が通うメディアとして使う」という感覚へと進化できるよう啓蒙しています。

たとえば、アパレルのハンガーポップに人気ファッション誌のような世界観が表現されていたら、受け取った生活者に、「このDMが溜まっていくのがうれしい」「私の気持ちを知ってくれている」と感じてもらえるかもしれません。他のメディアと融合することで紙の価値を高めればバラマキがなくなり、予算の使い方も変わって良い連鎖が生まれてくると思います。紙を使ったDMは、そうした可能性を切り拓くカギになりうるメディアだと期待しています。


第34回全日本DM大賞作品募集中!(締切10/31)

戦術性・クリエイティブ・実施効果などにおいて優れたダイレクトメール(DM)を顕彰する「全日本DM大賞」がDM作品を募集中だ。応募締切は10月31日。表現面だけでなく、ほかのメディアとの組み合わせで相乗効果をもたらしたDM、レスポンス獲得で実施効果を収めたものなど多角的に評価する。応募用紙や過去の作品集は公式サイト(https://www.dm-award.jp/)にてダウンロードできる。

お問い合わせ

日本DM大賞事務局(株式会社宣伝会議内)
TEL 03-3475-7668
E-mail. info@dm-award.jp
http://www.dm-award.jp

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