昨年秋、大阪芸術大学に竣工したアートサイエンス学科の新しい校舎。これは世界的に知られる建築家 妹島和世さんの設計によるもので、周囲の環境との調和を考えた有機的なフォルムが特徴だ。今年7月、この校舎を使った1日だけのインスタレーション「All for You」が展開された。

瀧本幹也さんが『O Plus』のために撮影した今回のインスターレーション。
風船でポスターを浮かべる インスタレーションをつくる
コンクリートとガラスの空間に浮かんだのは、ポスターを吊るした100個の風船。そのポスターには、言葉がひとつずつ切り抜かれている。「I」「LOVE」「Me」「Do」…これらはアメリカの音楽チャート「ビルボート」の年間チャート上位100曲のタイトルに使われている言葉である。大阪芸術大学が創立した1957年から妹島さんによる新校舎が完成した2018年までの62年分の年間チャート、合計6200曲のタイトルを解析し、導き出したものである。
このインスタレーション、そもそもは大阪芸術大学が発行する雑誌『O Plus』vol.4の企画として展開されたものだ。古平正義さんが同誌のアートディレクションを務めることになり、企画内容や誌面構成を大きくリニューアルした。
新校舎竣工後、初めての発行となるため、『O Plus』ではお披露目も兼ねて、新校舎に絡めた3つの企画を展開している。そのひとつが、建築物を模写する「けんちく体操」と校舎のコラボレーション。もうひとつが、写真家 瀧本幹也さんによる写真作品。そして、古平さんをはじめ、瀧本さん、テクニカルサポートとしてライゾマティクス・デザイン 木村浩康さん、塚本裕文さんがチームを組んで取り組んだのがデザインをテーマとしたインスタレーション「All for You」である。
「他の企画との兼ね合いもあり、タイポグラフィを主軸にすることは早い段階で決めていて、当初は床に立体的な文字を並べるなども考えていたのですが、解放的なこの空間を存分に活かすには、やはり高さを活かすべきだなと。ポスターを上から吊るす、棒を使って立てるなどを考えていたのですが、街中で風船が浮いているのを偶然見かけて、あ、これだ!と思ったんです」と古平さんは振り返る。
そのことがきっかけになり...