伝統産業が抱える課題に向き合い、それを解決するための新しい方法をつくる。シーラカンス食堂の小林新也さんは、地元の伝統産業を根底からリ・デザインする。

そろばんの珠を活かした時計『そろクロ』。
課題の本質を見定める
兵庫県小野市は、播州そろばんと家庭用刃物の生産地だ。その地で伝統産業の復興に挑戦しているのが、シーラカンス食堂の代表であり、同市出身の小林新也さんだ。
「問題の根っこは何かと考え、課題の本質を見定める。自分が主体的に動いていかないと絶対にうまくいきません」と語る小林さん。最初はそろばんのデザインを刷新することを考えたが、次第に産業形態そのものに違和感を抱いた。そろばんづくりは分業で成り立っているが、分業を前提とせずに、そろばん以外で各工程の生産量を維持することを考えたのである。
そして、そろばんの珠やヒゴ竹を使って、時計でありながら数を数える知育道具にもなるプロダクト『そろクロ』を開発。そろばんが計算機であった時代は終わり、ポイントは「教育」だと考えたことがきっかけだという …