カンヌライオンズ2019 グランプリ作品これで早わかり PART1
各部門でのグランプリ有力候補だったNIKE「DREAM CRAZY」を押さえて、BURGER KING「THE WHOPPER DETOUR」が三冠に輝いた今年のカンヌライオンズ。社会課題への取り組みがより顕著になっているが、従来のように問題提起にとどまらず、それを実行に移す企業が高く評価される結果となった。
TV RAIN「AI VERSUS」ロシアの国有放送と民間放送の二局が流すニュースをAIに学習させた。その結果、一方がバイアスのかかった答えを出すように。正しい学習をしなければ、AIも正しい答えを出してくれないことを証明している。
クリエイティブ・データ部門の審査基準として、僕は3つの視点を審査員に提示しました。1つめはクリエイティブ視点で、「Transformative Idea」。データで広告の効率を少し高めるとかではなく、業界や社会の仕組みを変革してしまうくらいの大胆なアイデアかどうか。
2つ目はカンパニー視点で、「Commercial and Emotional Value」。ユーザーから集めたデータを企業のマーケティングのためだけに使うのではなく、ユーザーの心を動かすような価値を提供しているか、ということ。3つめはユーザーの視点で、「Forward-thinking Ethics」。つまり倫理の問題で、皆が信頼できる正しいデータの使い方をしているかということを見ていきました。
グランプリは「GO BACK TO AFRICA」とボルボの「THE E.V.A INITIATIVE」で票が半々に割れて、最終的には審査委員長の僕の1票で決まりました。僕がグランプリ作品で注目したのはユーザー側の視点です。
最近のソーシャルメディアは偽の情報やヘイトメッセージが溢れ、だんだん嫌な場所になってきている。その現実を隠して見なかったことにするのではなくて「GO BACK TO AFRICA」というヘイトメッセージを逆手にとって、「魅力的なアフリカの旅に行こう」というキャンペーンに変えたのは、まさに今の時代に合っているし、ユーザー的な視点からも正しいデータの使い方を見せてくれた。この作品では...