いま世の中で話題になっているCMをつくっている人たちは、どのように企画を考え、映像をつくり上げているのだろうか。今回は、「クリーム玄米ブラン」などを手がける横澤宏一郎さんです。

(左)ゲスト・横澤宏一郎(右)聞き手・足立茂樹
佐藤雅彦さんの影響を強く受けている
足立:横澤さんが手がけたソフトバンクのギガ国物語の世界、すごいですね。これまでのCMを拝見しても、こうした世界観をつくるのが得意なのかなと感じました。
横澤:あのシリーズはまさに世界観をつくろうと考えて取り組んだものです。日常劇にすると白戸家、時代劇にするとauになってしまうので、「どこの島が空いているか?」と考えたときに、宮崎駿さんのアニメや、ハリウッド映画の舞台のような未来か過去かわからないファンタジーの世界が空いていると思ったんです。その真面目な世界観に“スマホあるある”を入れたら面白いんじゃないかと考えたのが原点でした。
足立:あの世界観を実現するための撮影は相当大変だったんじゃないですか?
横澤:第1弾は工場の跡地にハリウッド並みの40メートル級セットを組みました。CGも大切で、ジョージ・ルーカスと仕事をしていたVFXの第一人者上杉裕世さんにVFXの監修を依頼しています。シリーズ最初の監督を務めた小林大祐さんは画にとてもこだわる人で、上杉さんに「ルーカスのほうがやりやすい」と言わせたほど世界観を突き詰め、今のギガ国のベースをつくってくれました。最近はそのベースの世界観と会話劇の両立を目指してつくっています。
足立:世界観で言うと、アサヒグループ食品の「クリーム玄米ブラン」のCMもかわいらしい、独特の雰囲気があります。
横澤:僕は2016年に博報堂を辞めてからBORDER inc.を設立したのですが、基本的には社員は一人。ですので、今も博報堂の若手を入れてチームをつくり、みんなと企画を考えています。どれも外し難くプレゼンでは、6案程度出すことが多いんです。そうすると企画の幅があるので営業も、クライアントも安心する(笑)。ただ、このCMもそうですが、結果的に選ばれた案が自分でも一番納得できている。
足立:シリーズ最新CMは「クリーム“発芽”玄米ブラン」と“発芽”が追加されたことがポイントになっていますね …