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第98回ADC賞に見る アメリカジャーナリズムと反トランプと…

楓セビル

『TIME』誌の表紙を描くTim O'Brien。

5月6日、ニューヨークでArt Directors Club(以後ADC)の98回目の授賞式が行われた。1世紀近くもの間、広告界で重要な賞のひとつとされているADC賞を、筆者はいつも楽しみにしている。他の大きい広告賞-カンヌライオンズ、A&AD、One Showなどには見られない作品が顔を出していることが多いからだ。

2017年、指導者を失い路頭に迷っているような状態だったADCに、同じく広告賞を提供しているOne Showが手を差し伸べ、ADCと合併。One Club For Creativityとして再出発した。同時に、One Show はこれら2つの広告賞の個性、特徴をはっきりと分け、2賞の混同を防いだ。One Showの副理事Yash Egami氏は、次のように語っている。

One Show賞 vs ADC賞

「簡単にいえば、One Showは広告の賞、ADCはデザイン、制作技法に与えられる賞。前者は主に卓越したアイデア、いわゆる"ビッグ・アイデア"と呼ばれるものに与えられ、後者は主にエクゼキューション(制作技法)、優れた表現技術に与えられる賞と言えるだろう」という。審査員は違った分野のエキスパートが選ばれる。受賞者に与えられるトロフィーも、前者はペンシル、後者はキューブと異なる。選ばれる作品には、両方の賞を受賞しているものもあるが、前述したように、ADCだけに見られるものが少なくない。

ADC賞が他の広告賞と大きく違う点はもう一つある。エントリーの対象が世界的に活躍している巨大な広告会社だけではなく、他の広告賞にはさまざまな理由で参加しない社員数人の小規模な広告会社や、フリーランスのデザイナー、映像制作者、テクノロジスト、イラストレーターなども含まれていることだろう。

ADCは、常に素晴らしい作品を作りながらも広告賞とは縁遠い中小の広告会社、プロダクション、フリーランサーなどの存在を世界中に知らしめるという、ADC発足当時からのミッションをいまも持ち続けているのである。今年、Illustration部門でゴールド、シルバー、ブロンズの3賞をいっぺんに受賞したフリーランスのイラストレーター Tim O’Brien、Interactive部門でゴールドを獲ったスウェーデン ストックホルムのブティック Akestam Holst NoAなどがその好例だ。

多数のジャーナリズム・テーマ

第98回ADC賞の最高賞であるブラックキューブを獲得したのは、『The New York Times』紙のシリーズ・キャンペーン「The Truth is Worth It」(03)。Droga 5とニューヨークのエディティング・プロダクション Final CutとSignificūnt Others、サンタモニカのプロダクション Furlinedの共同制作だ。キャンペーンは、移民問題、環境保護問題、地球温暖化、人種偏見、トランプの嘘、白人崇拝主義など、いま米国が直面しているさまざまな問題の真相を、ジャーナリストの目で捉えている。

03 BEST OF SHOW他を受賞したThe New York Times「THE TRUTHIS WORTH IT」。

迫力のあるリアルなビジュアルが、見る人の心をとらえずにはおかない。審査をしたSaatchi&Saatchi チーフ・クリエイティブ・オフィサー Taras Waynerは、「真実とは何か。それを掘り下げるとはどういうことか。このキャンペーンは、ジャーナリストの生死を賭けた努力と、彼らが守り続ける真のジャーナリズムの尊さを教えてくれている。問題なくトップだ」と、語っている …

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