電子書籍では得られない紙の本の魅力のひとつが、手触りや質感だ。ブックジャケットをつけられるのも本ならではの楽しさ。このコーナーではさまざまな質感を持つ竹尾のファインペーパーを使用し、そこに多彩な印刷加工技術を掛け合わせることで、触って感じる新しいブックジャケットを提案していく。

デザインのテーマは「恋」
今回ブックジャケットに使用したのは、この春にFSC森林認証紙としてリニューアルしたアラベール-FS。非塗工でありながら高い印刷適正と発色性を持つ高級印刷用紙のロングセラーだ。アラベール-FSの4色ある白の中から一番白いウルトラホワイトを選んで、ブックジャケットをデザインしたのは、今年JAGDA新人賞を受賞した小林一毅さんだ。
「僕は文字や図象を手描きにすることが多いんです。アラベール-FSは、人肌に近い質感。手描きの微妙な線のブレ感がアラベールのナチュラルな風合いと馴染み、手描き文字との相性がいいので、普段からよく使っています」と話す。
小林さんは使い慣れたアラベールに赤と黒のりんごを描き、その一部に金の箔を押した。シンプルな形ながら、意味深い2つのりんご。そこに小林さんが込めた意味とは?「本との親和性が高いものとして、デザインのテーマに選んだのは"恋"です。恋には純愛のように美しい面もあれば、時には毒を感じるような面もあります。その象徴として赤と黒のりんごを描き、対比して見せることにしました」。純愛を象徴する赤いりんごはすっと立ち、毒のある恋を象徴する黒いりんごは運命が転がるように「Romance」という文字に支えられている。
「ブックジャケットを使う人にとってシンプルなモチーフや色の方が文庫本の内容を問わず汎用性が高いと思い、りんごを選びました。りんごは絵として魅力的に見えるように、実物よりもすっきりとした形に整えています。りんごというモチーフが本を手にした人を物語により深く入り込ませたり、その本をもっと好きになるきっかけになればと思っています」。アラベール-FSに初めて箔を使った小林さんは「印刷と箔の対比が思っていた以上にきれいな仕上がりで、これまでずっと使っていた紙ながら、とても新鮮でした」と話している。

代官山 蔦屋書店での個展ポスター

代官山ヴィンテージマガジンフェア

TOKYO COFFEE FESTIVAL

PLAYFUL ポスター
今月使った紙:アラベール-FS ウルトラホワイト 四六判Y目 130kg
繊細で優しい風合いを持つ、非塗工の高級印刷用紙です。高い印刷適性と発色性を保ちながら、柔らかい風合いを失わず、ナチュラルで気品のある印刷表現を可能にします。
INFORMATION
5月28日から銀座のクリエイションギャラリーG8で始まったJAGDA新人賞展2019でも、このブックジャケットを展示。会場では箔の色を変えたバリエーションもお目見えする予定。

小林一毅(こばやし・いっき)
1992年滋賀県彦根市生まれ、大阪府寝屋川市、神奈川県横浜市育ち。2015年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。資生堂クリエイティブ本部を経て、2019年フリーランスに。2016年東京TDC賞、2019年日本パッケージデザイン大賞銀賞受賞。
編集協力/竹尾