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2019年スーパーボウルCMに見るアメリカの顔

楓セビル

今年のスーパーボウルはニューイングランド・ペイトリオッツの圧勝で終わり、退屈なものだったが、それに反し、米国フットボール協会(NFL)がアメフト100周年記念のために作ったCMは豪華絢爛。有名フットボール選手50人が出演している。

今年のスーパーボウル(以後SB)は、チームのスキル差が目立ち、スローテンポで低スコアの、あくびが出る試合に終わった。それにひきかえ、NFL100周年記念として制作されたCMは、新旧フットボールスター50人が勢ぞろいし、豪華なディナーテーブルがめちゃくちゃに破壊されるという、いかにもアメフトらしく楽しいものであった。『USA TODAY』誌の広告格付サイトアドメーター(AD METER)においては人気第1位に選出され、王座を獲得していた。試合そのものより、CMの面白さがSBの評判を救ったようだ。

ストリーミング・スーパーボウル

とはいえ、NFLが未だ複数の問題を抱えていることに変わりはない。警察官の人種差別による暴行という事件に抗議するフットボール選手数名が試合前の国家斉唱の際に起立せず、被害者への黙祷としてひざまずいたことに対し、NFLはこの運動を最初に始めたコリン・キャパニックをリーグから締め出すという行為に出た(注:ナイキはキャパニックをキャンペーン広告に起用。その結果、多くの論争を巻き起こした)。

それに対し、「信念の自由」「表現の自由」を提唱するファンは、テレビで中継されるフットボール試合観戦をボイコットすることで抵抗を示した。また、特定の選手の家庭内暴力事件が相次いでニュースになったことが、フットボールファンの減少を招いた。その結果、これまで無敵だったSB中継のテレビ視聴率が低下。今年のSBのテレビ視聴者数は9820万人となり、昨年の1億340万人から5%の減少を見せたと報告されている(ニールセン)。

また、従来のテレビではなく他のメディアを通して試合を観る視聴者が増えたことも起因している。ミレニアル世代の多くは、YouTube、Hulu、Amazon Prime Video、Netflix、CBS All Access、HBO Nowなどのストリーミング・サービスサイトで試合を観戦していた。「ストリーミング・スーパーボウルと呼んでもおかしくない。この傾向は年々強まるだろう」と『MEDIA POST』のアレックス・ウェップリンが述べた。

CMに見る4つのトレンド

SBCMの面白さは、そこにアメリカマーケットの嗜好や傾向が見られることだろう。今年も例年と同様に、いくつかの傾向が見られた。

1つは、"テクノロジー・ディストピア"(テクノロジー地獄郷)と呼べるものだ。1984年のアップルのCM「1984」は、コンピュータにコントロールされている人間たちを新しいコンピューターアップルが解放するというものだった。このSBCMの金字塔から35年たった今、CMの世界にはテクノロジーがもたらすディストピアというテーマが再び訪れているようだ。

例えばアマゾンの「すべてがうまくいくとは限らない」(Not Everything Makes the Cut)は、犬の首輪や歯ブラシ、電子レンジ、ジャグジーなどに搭載されたアレクサが混乱して、さまざまな失敗や不便を巻き起こす様を描いたものだ。「本当に、全てうまくいくっていうわけではないのよ」と、同僚にひそひそと女性が話しかける。山のようなドッグフードを前にして「もうお前とは口をきかないぞ!」と怒るハリソン・フォードのシーンでCMは終わる。

確定申告用ソフト「TurboTax」のCMには"ロボチャイルド"と呼ばれるロボットが登場する。可愛い顔、優しい気性などは人間そっくりだが、「エモーション(感情)という人間特有のものは、決して理解できないし、持つこともできないのよ」と話す人間に対し、ロボットは「それは悲しい」と言いながら大笑いする …

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