脱毛の広告にもかかわらず、抜かれることに抗う「毛」にフィーチャーしたこの広告。体中の毛たちは会議の結果、リゼの医療脱毛から生き残ることができるのか。



今回制作したビジュアル。
抜かれる立場から脱毛の効果を示す
擬人化された髪の毛、かお毛、うで毛、ゆび毛、わき毛、すね毛の6人が行うのは、「リゼ対策会議」。この会議では、"圧倒的"な効果を誇るリゼクリニックの医療脱毛を前に、なす術のない毛たちによる不毛な議論が繰り広げられる。第1回では「また生えればいいよ」と余裕を見せる毛たちも、次第に追い詰められ、1人、また1人と──。
全3パターンで会議の様子が描かれるこの広告を手がけたのは、デザインプロダクションのむすびだ。代表を務めるクリエイティブディレクターの大輪恭平さんは、「僕たちはこのリレーにおいて3番手の提案だったので、他チームの企画とアイデアが被らないことが大前提でした。モデルの起用など脱毛広告の王道的な表現は自分たちの前に出るだろうと考え、あえてストーリーものにしながら、クリエイティブリレーだからこその表現にしています」と話す。
この企画においては、掲出するメディアの特性も考慮したとデザイナーの金澤繭子さんは話す。「電車に乗っていると、何気なく目にした広告に書かれたクイズを解いている時があります。そう考えると、ストーリー仕立てでも読んでもらえる時間は十分にあると感じました。3人で打ち合わせを進める中で、『擬人化した毛が真剣に会議をする』という設定にたどり着いたんです」。
リアルな登場人物が生むシュール感
一方、コピーライターの水野裕一郎さんは、「面白いけれど、やりすぎかも」と提案時に感じていたという。「"毛の立場になる"というアイデアが出てから、『思いっきり脱毛を否定した方が逆にリゼの効果を謳える』『ストーリーにすることで面白さと理解度が上がる』と方向性を固めていきました。ですが、その設定は必然的にリゼが"悪者"的な立ち位置になってしまうので、『怒られるかもしれない』と感じながらも提案したところ、意外にも受け入れてもらえたんです。そこからはクライアントにも意見をいただきながら、薬機法の範疇で可能な表現を一緒に探っていきました」と話す。
第3回には「リゼ、ゼッタイダメ」というコピーを入れ、毛がリゼを恐れることで医療脱毛の効果を示す方向に振り切っている。
毛の擬人化にあたっては、かわいらしいキャラクターではなく、西洋絵画の婦人や貴族のようなリアルな人物にすることで、仰々しさを演出したと金澤さん。「キャラクターの存在感とは裏腹に会議の内容はふざけていて、ギャップを生むことを狙っています。加えて、登場する毛には見た目とセリフで個性を持たせました」と話す。
それぞれ「わき毛はごちゃっとしたイメージだから1番はじめにやられてしまうお調子者にしよう」「かお毛とゆび毛は薄いから、品のある女性のキャラクター」と細かく設定を決めている。そのほかキャラクターを青白く透けさせることで、毛が抜かれたことを表現するなど細部の世界観を作り込んでいった。
大輪さんは一連の広告について、「ビジュアルは3パターンあるので、スタンプラリー感覚でコンプリートしてもらえたら面白いですね。表現は脱毛広告の王道から外れていますが、だからこそ今までに関心がなかったリゼのファン層が獲得できるのではと期待しています」と語った。



B案として提案した企画。あえて平仮名の「け」を用いることで、一見して脱毛広告とは分からない不思議さを演出し、興味の喚起を狙った。

むすび
プロデューサー/クリエイティブディレクター
大輪恭平さん

むすび
コピーライター
水野裕一郎さん

むすび
アートディレクター/グラフィックデザイナー
金澤繭子さん
MUSUBI(むすび)グラフィックデザインをベースに、Webデザイン、映像制作、PR、キャスティングを行うクリエイティブカンパニー。1つひとつのプロジェクトに合わせて、各分野のクリエイターでチームを編成。フラットにアイデアを出し合うことで、クライアントの期待を超える、これまでにない新たなクリエイティブを追究している。 |
- 企画制作/むすび
- CD+PR/大輪恭平
- C/水野裕一郎
- AD+D/金澤繭子
- I/小松原英