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THE CREATOR あの人の頭の中

目の前の仕事にじっくりと取り組むことで見えてくるもの

松本巌(有限会社GAN MATSUMOTO)

いま世の中で話題になっているCMを作っている人たちは、どのように企画を考え、映像を作り上げているのだろうか。今回は、昨年まで「午後の紅茶」シリーズを手がけていた松本巌さんです。

(左)ゲスト・松本巌(右)聞き手・足立茂樹

コピーは「書く」よりも「見つける」

足立:同志社大学に通っていた時は、どんな学生でしたか?

松本:当時の京都はバンドブーム。僕もバンド活動していて、将来は音楽で食べていけたら、なんて軽く考えてました。大学2年の頃に、雑誌『POPEYE』がエッセイ・作詞・作家の3部門のコンテストを行ったんです。僕は作詞・作曲することが好きだったので、秋元康さんが審査員の作詞部門に応募したところ、優勝してしまいました。コンテストを企画したのが博報堂の同志社OBの方で、「君はコピーライターに向いているかもね」と言われて、それから興味が湧いて。コピーライターだったら自分に向いてるかもしれないと思い込み、広告の世界に進みました。

足立:電通関西支社に入社後、音楽の詞とコピーを書くことの違いはありましたか。

松本:作詞とは全く違う世界に入ったことは自覚していたので、広告で一人前になるまで自分の得意な音楽は仕事では使わないと決めました。僕が入社した頃はいまより余裕のある時代で、若手の育成も長い目で見てくれていた。なのに、僕はなかなかコピーが書けなくてダメ出しの連続。29歳のときに熱闘甲子園の仕事でTCC新人賞をやっと獲ることができました。

多くの人がおっしゃっいますが、「コピーは書くのではなく見つける作業」であることを、その時実感しました。商品とユーザーの気持ちの接点、ユーザーの気持ちを動かす時代感を見つけることが大切だと気づかされたんです。それからはコピーを書く前の"考える時間"に重点を置くようになりました。でも、熱闘甲子園は先輩コピーライターの児島令子さんにボコボコにやっつけてもらったからこその受賞です(笑)。

足立:どんな風にボコボコに(笑)?

松本:僕はノートに書きためたコピー案を児島さんに見てもらっていたのですが、あるとき「何もない。砂漠みたいなノートね」と言われて(笑)。児島さんは容赦なく手厳しいものの、よい視点や考え方があるとアドバイスはくれる …

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