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米保険業界のマーケティングを変えたガイコの奇想天外なキャンペーン

楓セビル

「ハンプ・デー(Hump Day)」はどういう日か知ってますか?「マルコポーロ」と子どもとの関係は?また、暑い夏の日、アイスティとレモネードのどちらがポピュラーなのでしょう?こんな米国の最近のスラング(ハンプ・デーとは水曜日のこと)や子どもの間で流行っている遊び(プールの中で遊ぶマルコポーロというゲーム)、またはミレニアルたちのアイドル俳優(人気ラッパーのICE-T)が、面白おかしく登場するCMがある。自動車保険の会社ガイコのCMである。

1999年にキャンペーンが始まって以来、こうしたユーモアCMを打ち続けているガイコは広いファンを持つが、昨年12月13日からこうしたファンの消費者に向けた「The Best of Geico」キャンペーンを開始した(01)

01 昨年12月に保険会社ガイコ(Geico)が開始した「The Best of Geico」キャンペーンのCM。過去25年以上にわたって制作されてきた同社のCMの中から、視聴者に一番好きなCMを投票させるキャンペーンだ。

これまでに作った100本を越すCMの中から、これはと思われる10本を選び、視聴者に一番好きなCMを投票させるキャンペーンだ。クライアントのために作ったCMの中で、どれが一番気に入っているか消費者に正面きって聞ける大胆不敵なクリエイティブエージェンシーは、バージニア州リッチモンドにあるマーティン・エージェンシー。ガイコと言えばマーティン・エージェンシーが思い出されるほど、よく知られている。

自動車保険の広告を変えたガイコ

ガイコ(Geico)は、「The Government Employees Insurance Company」の頭文字を取ったもので、1936年に創設された当時は、その名の通り、米国政府のために働く公務員を対象にした自動車保険であった。紆余曲折を経たのち、1996年、ガイコは米国の有名な投資家ウォーレン・バフェットの会社バークシャー・ハサウェイに買い取られた。そして1999年、ガイコはマーティン・エージェンシーが手がけたゲッコー(やもり)をマスコットとするCM(02)を開始した。この広告キャンペーンが、米国の自動車保険のマーケティングを大きく変える要因になった。

02 ガイコのCMの中で最も古いCMキャラクターは、1999年に登場したゲッコー(やもり)だ。

10年ほど前まで、保険会社の広告はいわゆる「Scare Tactics(恐怖戦術)」と呼ばれる手法を取っていた。火事や事故、肉親の死などの場面を見せ、保険に加入していない人たちが経済的な負担に悩んだり、逆に保険に入っている人が、ホッと安心する情景を見せるものだ。2010年に保険会社ミューチュアル・オブ・ニューヨークが俳優のジョン・トラボルタを起用したCMはその典型だ。大学に行くために子どもの頃から貯金していた青年の父親が、学費が貯まる前に死亡し、青年は大学に行く代わりに、軽食堂の清掃員となって働くストーリーだ。

それがガイコのCM以来、次第に変わり始めた。それまでの保険会社のCMとは全く毛色の変わったお笑いと突拍子もないギャグを主題としたCMは、多くの人を驚かせると同時に楽しませた。「保険会社の広告はみんな退屈だった。それがガイコの登場以来、CMを待ち焦がれるようになった」と、ワン・クラブのPR担当者ジャック・メローは言う。

しかもガイコはブランド広告の法則をも無視した。これまで、ブランド広告とは、同じキャラクター、メッセージ、ルック&フィールを執拗に投げかけることで、消費者の心の中にブランドイメージを植えつけるのが常道だった。ガイコはそれを大きく破り、複数のそれぞれあまり関係のないテーマやイメージのキャンペーンを同時に放送するという常軌を逸したマーケティングを展開したのだ。

ちなみに、現在ガイコはやもり、ラクダ(03)、豚のマックスウェル(04)、原始人(05)、その他多種多様なパロディーグループと5つのキャンペーンCMを同時並行でテレビで流している …

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