大都市において、川の利用は利水・治水が中心であり、注目される機会は少ない。かつて「まち」と「ひと」をつなぐ存在だった川は、いつしか存在感を失いつつあった。横浜市と事業構想大学院大学では、「川」「まち」「ひと」の関係を編み直し、新しい価値・魅力を創出するプロジェクトを実施している。
水辺の未来を創造する
横浜市中心部を流れる大岡川。春には満開の桜が美しい景観と賑わいを生み、1年を通してSUP(Stand Up Paddleboard)などのアクティビティを楽しむ人が訪れる。実はこの大岡川流域は、アーティストの制作拠点であり、アートフェスティバルが開催されるなどアートの街という側面も持つ。
このように多様な魅力を有するエリアであるが、川で繋がるさまざまな関係者の間での交流が少なかったことから、効果的に魅力を発信できずにいた。こうした中、水辺に興味を持つ市民や地域内外の企業、そして行政が連携し、"クリエイティブ"をキーワードに、水辺とまちが一体となった新しい賑わいを創出する挑戦が始まっている。
この挑戦の象徴(エンジン)として昨年10月から11月にかけて実施されたのがイルミネーションイベント「大岡川ひかりの川辺」だ。横浜市と事業構想大学院大学が主催し、地域の活性化を願うさまざまなプレイヤーと連携して実現した。
演出を手がけたのは、演出家であるSPOON 谷田光晴さん。谷田さんは、演出にかけた想いについて次のように説明する。
「このプロジェクトに向き合った時、このライトアップによって新しい街の魅力を感じてもらいたいと同時に、他で見たことのないものを作りたいと考えました。通常のライトアップはLEDの電飾を使ったものが多いのですが、LEDを使ったライトアップは、木々に電飾を巻き付けるものが多く、明るい時の見た目が美しくありません。新たに光の要素を追加し、輝かせているというよりも、日常と変わりないように見えるいつもの川が、突然輝きだすという風に感じてもらいたいと考え、ムービング照明と、レーザーを使った演出を採用しました。それによって、地域の方やこの場所を訪れた方に、見慣れた川が美しく輝きだす瞬間を目撃していただくことができました。皆さまの中に、その体験を記憶として残せたのではないかと思います」。
このようなプロジェクト、取り組みが形や手法を変えながらでも続いてゆくことで、地域の人々が関心を川に寄せるきっかけとなり、さまざまな人、文化の交流の場所になっていけばと話す。
外部のプレイヤーも巻き込む
横浜は、2020年までに、ラグビーワールドカップ2019™や東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会といったスポーツイベント、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)といった国際会議など大規模イベントを控え、国内外からの訪問者数の増加が見込まれる。こうした中、いかに横浜みなとみらい21地区や中華街以外のエリアまで足を運んでもらうか、歩きたくなる水辺空間を形成できるかが事業構想大学院大学として重要だと考えている。
その際、ポイントとなるのは、地域のアイデンティティにもなりうる新しい魅力をつくるために、地域に思い入れのある人々を主体に、その地域ならではの施策を実行することである。それが、民間ならではの柔軟な行動と思考で、地域資源を生かした新しいクリエイティブを生み出すことにつながる。大岡川流域では、「アート」「環境浄化」「運河活用」「SUP」「食」「不動産」など、地域のさまざまなプレイヤーが同じ方向を向いて、魅力的な地域をつくろうという土壌が作られつつある。
横浜市と事業構想大学院大学では、「横浜の水辺を活かした新たな魅力創出事業に関する基本協定」を2017年12月に締結し、2020年度まで大岡川流域の地域活性化、魅力創出に取り組んでいる。2019年度は、「食コンテンツ」や「アクティビティ」も含めた総合的な魅力づくりにも力を入れていく計画だ。地域を中心に、水辺空間を活用して地域活性に取り組みたいと考える企業と共創しながら、地域づくりを進めていく。
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事業構想大学院大学
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