クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に生かしているのか。今回は、アーティストのテンテンコさんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。

『遠野物語・山の人生』
柳田國男(著)
(岩波書店)
「平地人を戦慄せしめよ!」
私たちが忘れてしまった世界が遠野物語には残されており、その異界への近さに驚かされる一方です。馬との悲恋の末、天に昇りオシラサマとなった娘。神隠しにあった娘が、数年後帰って来たが老婆の姿で、帰る日は必ず嵐になるため、村境を封じる石塔を建て帰って来れないようにした話。深い森や山で道に迷うと現れる家マヨイガ、ザシキワラシ、カッパなどなど…どれもほんわかしたような昔話ではなく、遠野のどこの地域の何家といった、リアルで生々しい記録という印象です。
死者にまつわる話や死そのものについての話も数多く、しかも大げさではなくすごくフラットで、生の延長線上のような感覚で語っているかのようです。その感覚こそが、異世界への入り口をごく間近にさせたのかもしれません。というより、本当に異世界がそこにはあるかのようで、読んだ私もまさに戦慄させられた平地人の一人になりました… …