オリエン、プレゼンの過程でクライアントは何に気をつけ、どこに注目して判断しているのか。外部のデザイナーとの協業も多い、キリンビバレッジのデザイナー遠藤楓さんに聞いた。

KIRIN 午後の紅茶「#午後ティーでカンパイ」キービジュアル
オリエンの解像度が最終的な成否を分ける
キリンビバレッジでは各ブランドに担当がついていて、私は「午後の紅茶」のマーケティングとデザインを担当しています。最近手がけた「紅茶の日(11月1日)」のキャンペーンでは、外部のクリエイティブチームの方々と企画を考え、パッケージも制作しています。午後の紅茶が見る未来のビジョンは「現代を生きるお客さまの暮らしに寄り添いながら、紅茶を日本の日常茶にすること」。そして5年ほど前から続くこのキャンペーンの目的は、「紅茶を普段飲まないお客さまに『紅茶の日』をきっかけに紅茶を手に取ってもらい、いつか日常的に飲んでもらえるようになること」でした。
私たちブランドチームは、まずその目的をどうデザインに置き換えていくかを考えます。オリエンをする前に、目的の解像度を高めることから始めるんです。「紅茶を日常茶に」というビジョンですが、日本では紅茶の市場は飲料市場全体の約5%しかありません。紅茶は午後のひと時にゆったり飲むイメージが定着していますが、常にスマホがそばにあって、情報も多く、忙しい現代人の生活の中では、日常的にそうした時間を確保することは難しい。
20~30代の女性にとって午後の紅茶は、学生の時によく飲んでいて、華やかでキラキラした思い出の詰まったブランドだけど、いまの自分には関係ない、と思われてしまっています。そこで、カンパイ(行動)を促すパッケージで、誰かとおしゃべりする時間や家族との団らんの時間に飲んでもらい人を笑顔にする、「繋がり」「誰かとの時間の共有」を午後の紅茶が叶えていきたいと思いました。
最初のオリエンは本当に重要で、成否が決まってしまうと言ってもいいと思います。伝える内容がふわっとしていたり、コミュニケーションにロスがあったり、そもそも自分たちが考え抜けていない時はうまくいきません。なので、できるだけ詳細にイメージを膨らませて、「誰に、どんなシーンや気持ちで飲んでほしいか」を言葉にして伝えています …