マスキングテープの人気ブランド「mt」が全国各地で行っている、テープで空間や建物全体を装飾する「mt ex展」。6年前からは、商品の取り扱いのある海外各地でも開催し、世界中にファン層を広げている。
2012年に台湾からスタート
岡山県の粘着テープメーカー・カモ井加工紙が、イヤマデザインの居山浩二さんにブランディングを依頼し、文具・雑貨用マスキングテープとして確固たるポジションを確立してきた「mt」。2009年からはmtで空間全体を装飾したインスタレーションと限定商品の販売を行う「mt ex展」を国内外で開催し、人気を博している。
初の海外展開は2012年の台湾だった。「以前からアジア圏でもmtを販売しており、特に台湾にはファンが多数いると聞いていたので、もし海外で展示イベントをするのであれば、まず台湾で、と考えていました」と居山さんは話す。日本でのイベントと同様に、海外のファンとも直接触れ合い、商品を伝える場を作りたいと考えていた。ちょうどその頃、mtを取り扱っていた台北の書店でmt ex展をやってほしいという企画が持ち上がり、実現した。
実際に開催すると、日本以上と言えるほど熱心なファンが集まったという。2回目の台湾での開催では、開催前日の夜中の12時から並ぶファンまでいたほどだ。これに手応えを得て、mtは積極的に海外でのイベントを展開していく。
「mtは世界中で販売していますが、イベントに来ていただくことで、お店で見るのとは全く違うブランドの世界観を体験してもらえますし、現地では販売していない商品なども見てもらうことができます。他社もマスキングテープに多数参入していますが、空間全体のインスタレーションを含むこの規模のイベントを行っているのはmtだけです。mtの世界をさまざまな側面からリアルに体感していただくことで、ブランド力の向上、海外でのPR強化、新規顧客との接点の構築など、多様なメリットにつながります」。
海外で展示を開催する際は、その土地のディストリビューター(現地の店舗とカモ井加工紙をつなぐ卸売担当者)から会場候補を提案されることが多い。会場設営は、ディスプレイ関連のグローバル企業に依頼し、全体の管理とクオリティを担保する方法として、日本人担当者をつけるケースが多いという。開催地域は中国、香港、タイ、シンガポール、ニューヨーク、メルボルン、パリ、ミラノなどアジアを中心に世界各国に広がり、これまで13カ国、21都市で26回開催している。
「その場でしかできない展示」をする
イベントの内容自体は、あえて日本と変えていないと居山さんは話す。「最初はその国に合わせてゼロベースから内容を考えようとしましたが、現地のmtファンの方からすれば、日本でどんなことをやっているかを知りたいのではないかと思い、なるべく日本でのイベントをそのまま持っていくようにしています」。ただ、プラスアルファとして開催国の商習慣やトレンドは取り入れている …