中国の国民酒「白酒」のパッケージデザインを日本人デザイナーに依頼したい──。白羽の矢を立てられたグリッツデザインの日髙英輝さんは、ブランドの歴史をパッケージで表現するデザインを提案した。
「日本のデザイナーに頼みたい」と社長からオファー
「白酒(パイチュウ)」は、中国全土で広く飲まれているお酒だ。日本では中国の酒というと紹興酒のイメージがあるが、中国全国に白酒の酒蔵は1万以上あり、日本でいう日本酒のような国民酒として愛飲されている。種類も豊富で、数百円から数十万円する高級酒まで価格帯もさまざまだ。
昨年、グリッツデザインのアートディレクター 日髙英輝さんはこの白酒のパッケージデザインを手がけた。クライアントは、北京から車で3時間ほど南下した中堅都市・滄州にある白酒メーカー「十里香」だ。「2016年秋に知人から、十里香の社長が高級白酒『五星』のパッケージデザインを日本人に依頼したいと考えているから、そのコンペに参加してほしいと連絡がありました。中国人デザイナーからは同じようなデザインしか提案されないので、日本人デザイナーに頼みたいというお話でした」。
最初、日髙さんはこの話を断るつもりだったという。「そもそも白酒を飲んだことがないし、滄州にも行ったことがありません。市場やターゲット、どんなシーンで飲むのかなど、さまざまな情報を自分のものにしなければいいデザインはできません。だから中国にない変わったデザインを期待されているだけなら受けるのはやめようと思ったんです」。来日した社長が事務所を訪れた時も、過去の作品を見せながら、自分がどのようにコンセプトワークを行うかを説明し、改めて断りの意思を伝えた。
だが、「自分の話も聞いてくれ」という社長の説明を聞いて心変わりしたという。その話によれば、中国の白酒売り場は棚獲り競争が加熱し、容量を多く見せるために箱は大きく、パッケージは豪華絢爛になっている。だが、十里香ブランドはその競争から一線を画す売り方がしたい。大きく見せるのではなく質をよく見せたい。そのためにパッケージデザインが重要で、日本人デザイナーならそれを実現してくれると探しているという …