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上海Grand Designの10年を5つのポイントから振り返る

西克徳(Grand Design)

デザイン会社Grand Designが上海拠点を立ち上げて今年で10年。4年前には香港拠点もつくるなど、アジアを中心に仕事を精力的に展開し、事業を拡大してきた。そのために重要だった5つのポイントを代表の西克徳さんに振り返ってもらった。

世界に通じる「人の心が動くツボ」を探して

──なぜ、10年前に上海拠点を立ち上げようと考えたのですか。

映画や小説が民族や文化の背景を超えて感動を届けているように、世界中の人に通じる「人の心が動くツボ」というものがあります。2000年代前半、グラフィックデザインの世界にもその「ツボ」があるはずと考えた僕は、海外のデザインコンペに応募するようになりました。そこで受賞した縁で海外のデザイナーの知人が増える中で、日本にはない多様性にあふれた環境に衝撃を受け、より世界に通じるデザインを身につけるために海外で働きたいと思うようになりました。チェコでデザインを教えないかと持ちかけられ、真剣に検討したこともあります。

中国への道を開いてくれたのは、日本と台湾にルーツを持つ著名な投資家の邱永漢さんです。邱さんが中国の学校でデザインを教える人を募集していると知り、興味を持って応募しました。そして、邱さんの「一度上海に行きなさい」というアドバイスに従って初めて中国に行ったんです。上海の高層ビル群を前に圧倒されていた僕に邱さんは、「この国はこれから世界中をかき回す。若いあなたは、老いていくヨーロッパではなく若い中国で仕事をしなさい」と言いました。こんなに優秀な方が言うんだから僕が悩む必要はないと、上海に拠点を作ることを決めました。

Point 1:
よき通訳との出会いが道を開いた

──とは言え、実際に上海支社を立ち上げたのはそれから約4年後ですね。

言葉、つまり通訳の問題がありました。当初わかる中国語は「ニーハオ」と「シェイシェイ」ぐらい。通訳と言っても、単純に言葉ができればいいわけではありません。価値観が合うかどうかが大事だと思っていたので、2年かけて上海の大学で教えながら探し続けました。

そしてやっと出会えたのが、価値観が合うだけでなく、文化も含めて通訳してくれる李晶でした。彼女が訳すと話の通りが全く違う。文化のギャップを説明してくれるからです。例えば僕が話している途中で通訳を止めて「あなたの考えは日本式で、中国人はこう考える、それでいいか?」などと確認してくれるのです。この人は素晴らしいと感じ、企業の社長秘書をやっていた彼女をそれから2年かけて口説き落とし、創業メンバーとして迎えて上海Grand Designを立ち上げました。

Point2:
日本人と現地スタッフをフェアに扱う

──デザインスタッフはどんなメンバーでスタートしたのですか?

最初は中国人を1人募集し、その後上海で働きたい日本人を募集し、4人体制でスタートしました。採用の基準は東京も上海も同じで、やはり価値観が合うことを重視しています。その頃驚いたのは、家賃だけでも1500 元はする当時の上海で、大学新卒の一般的な給料は3500元であることでした。一方で、駐在の日本人社員は2~3万元もらうのが普通です。

我々はこの地で中国人の力を借りなければ仕事はおろか生活もまともにできないのに、10倍近い格差があるのはアンフェアではないか?そう考え、上海Grand Designでは少しずつ中国人の給料を上げていき、最終的に基本給は日本人も中国人も一律平等にしました。クリエイティブの技能が上がったら、基本給に上乗せする方式です。

中国で仕事をする前に知人から「中国では転職は当たり前。半年いたら普通、1年いたら感謝、3年いたら神様だ」と教わりましたが、安心して働ける会社だと思ってくれたのか、5年以上いる社員が4割を占めています。

Point3:
商習慣の違いを理解し、対策する

──商習慣の違いで苦労したことは?

中国はクライアントがたくさん保険を掛けたいようで、とても気軽に依頼してきます。一度に複数の会社に声をかけるのも普通です。日本人は依頼を受けると、仕事が始まったと思って全力で考え始めますが、1カ月後に提案すると話が変わっていたり、案件が消えていたりする。中国のクライアントからすると「なぜこの段階からそんな本気で作ったの?」というボタンのかけ違いです。過去には、パッケージデザインの依頼を受けて200案ほど考えてプレゼンをし、その場は拍手喝采で盛大な接待まで受けたにも関わらず、その後ピタッと音沙汰がなくなったこともありました …

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