創業時から鎌倉に本社を置き、鎌倉の企業をITの力で支援する「カマコン」など、地域に密着した活動を行ってきたカヤック。今春、「鎌倉資本主義」というキーワードの元、「まちの保育園」や「まちの社員食堂」など、地域の企業が共同で使える施設を立て続けにオープンした。こうした活動を通じて、カヤックは何を実現しようとしているのか。

柳澤大輔(やなさわ・だいすけ)
1974年香港生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、ソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。1998年、学生時代の友人と共に面白法人カヤックを設立。オリジナリティあるWebサイト、スマートフォンアプリ、ソーシャルゲームなどのコンテンツを発信する。また、「面白法人」というキャッチコピーのもと、ユニークな人事制度(サイコロ給、スマイル給、ぜんいん人事部)や、ワークスタイル(旅する支社)を発信。2014年に上場。地域活動として、2013年よりITの力で鎌倉を支援する「カマコン」をスタート。2017年より「鎌倉資本主義」を提唱する。
地域の幸福度をはかる新しい指標
──カヤックの提唱する「鎌倉資本主義」とは、何なのでしょうか。
「GDPという指標に限界が来ている」と思っているんです。株式会社という仕組みが世の中にできたのが約400年前、GDPができたのが約80年前で、基本的にはこうした資本主義の仕組みは「資本を増やしていけば、人は幸せになる」「経済発展で国民は幸せになる」という考え方に基づいています。カヤックは資本主義の最たる仕組みである上場も経験しているのですが、しかしどうも実感値として、人の幸せはGDPと単純に比例しないという思いがある。これは新しい指標が必要なんじゃないか、あるいは資本主義自体を新しくしないと幸せじゃないんじゃないか、と感じるようになりました。
一方で、カヤックは鎌倉で地域での活動もずっと続けていますが、こうした地域の活動の中に、どうやら新しい幸せが埋まっているという直感があって。その感覚をひもといていくと、資本主義というのは、基本的に資本を増やすものです。そして、会社という組織は、資本を増やしたり、数値的な指標を追い求めることが得意です。であれば、今までの売上利益と違う指標を立てて、増やしていく活動をすればいいんじゃないかと。今までは経済資本のみを一生懸命増やしていましたが、あと2つ資本があると考えています。それが「環境資本」と「社会資本」です。
「環境資本」というのは、簡単に言えば職住近接な暮らしをしている人は、ある程度幸せだということです。通勤の満員電車が不快だというのは多くの人が感じるところだと思いますし、逆に地方に移住した人が「最高!」と言っているのは、安い価格で広い家に住めて、職場も近くて、森や川など自然が身近にある環境的な要因が大きい。
そこに確実に幸せがあるならば、環境資本を増やすことに企業がコミットしていけば、社員の幸せも増すんじゃないかと。GDPだけで見れば、職住近接だとガソリンも電車賃も使わないから、数字は下がってしまいます。GDPの尺度では抜け落ちてしまう地方の幸せは、環境資本も測るようにしないとわからないということです …