昨年4月にパナソニック内に誕生したインハウスデザイナーによるクリエイティブチーム「FUTURE LIFE FACTORY」。ここでデザインしているのは、商品ではない。未来の生活をデザインとして具現化し、提案するのがミッションだ。
従来のデザイン開発のスタイルに危機感
「これまでのように決まった家電をデザインし、量販店で販売する従来の活動では、世の中の潮流に乗り遅れてしまう」ー「FUTURE LIFE FACTORY」設立の背景にはそんな危機感があったと、同チームリーダーの内田亮太さんは話す。
FUTURE LIFE FACTORYは、パナソニック アプライアンス社のデザインセンター(家電を担当する社内カンパニーのデザイン部門)所長直轄のクリエイティブチームとして、昨年4月に東京オフィス内に立ち上がった。それ以前も東京にデザイン開発の拠点はあったが、その活動は従来の領域に留まっていた。チーム設立のきっかけは約1年半前にさかのぼる。京都から東京に移ってきた新しいメンバーが、東京で活動する最先端のクリエイターと接したり、またSXSWなど海外のイベントを広く視察をする機会を得て、このままではいけないという思いを募らせたという。
「テック系やスタートアップ系のイベントでは、企業がクリエイターと組んで新たなサービスを世に問う動きが盛り上がっていました。これからの時代はモノがサービスに変わったり、モノとサービスがセットになったりして変化していく。その中で冷蔵庫、テレビといった枠組みのままモノを作ったのでは立ち行かない。既存の枠を外し、自分たちが目指す『豊かなくらし』を再定義した上で、デザイナーとしてそれを形にして世に問う必要があると感じたんです」(内田さん)。
同じように感じていた若手デザイナーが集まってデザインセンターの所長と直接議論を重ね、FUTURE LIFE FACTORYが誕生した。担うのは新領域開発で、ここでは既存の延長線上にある商品のデザインはしない。あくまで、デザインアプローチによる"事業の種"の創出や、"未来の文化"を思索し、社会に問いかける活動に徹する。そのために何をすべきか考えること自体も、メンバーに委ねられている。所属するメンバーは7名。30代前後の若手メンバーを中心に構成され、固定ではなく、約2年で入れ替わっていくように設計されている …