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「食」の老舗企業の挑戦 ブランド開発とクリエイティブ

会社の歴史の中から発信すべきコンセプトを発見する

中川政七商店×博報堂の有志チームが、約400年の歴史を持つ山梨県の老舗和菓子店の経営コンサルティングおよびリブランディングに取り組んだ。そのプロセスと成果を聞く。

リニューアル後の甘養亭河喜の店舗。ファザードを変更し、中には落雁用の古い木型を設置して、老舗らしさを演出した。

中川政七商店×博報堂有志チームが誕生

甘養亭は1626年(寛永3年)創業の老舗の和菓子屋だ。山梨県身延町に位置する日蓮宗総本山の身延山久遠寺の御用達として392年にわたり、名物「みのぶまんじゅう」や落雁を作り続けてきた。母と3人の息子で家族経営をしているが、近年出現した競合企業や、山中という立地の悪さもあり、経営は厳しさを増していた。そこで助けを求めた先が中川政七商店だったという。

中川政七商店 代表取締役会長の中川政七さんは「弊社は工芸を専門に他社の経営コンサルも行っていますが、実はコンサルの依頼の6割が食品系の会社からです。専門外だからと断り続けてきたのですが、本当に困っている人がいるし、僕らも工芸が生き残る道として、いい宿と食事があって工芸を見に来る"産業観光"の流れを作ろうとしているので、食も何とかしたいと思いはじめていました。とはいえ、工芸にも手が回り切っていない状況で引き受けるわけにもいかない。そんな折、博報堂の知人にその話をしたら、それなら博報堂が手伝おうという話になったんです」。

そこから博報堂社内で、マーケティングディレクターの井手宏臣さんら有志が集まり、中川政七商店×博報堂のチームが生まれた。まずはブランドのプロである有志たちに中川さんが自身の経営コンサルティングノウハウを徹底理解させるところからスタートしたという。中川さんの実践的な経営再生の訓練を積んだチームは、甘養亭で、まず現状の分析から始めた。

井手さんは「みのぶまんじゅうは、久遠寺にお参りに来た方々がお土産として買う商品です。しかし最近は高齢化が進み、山門脇にある甘養亭の直営店を訪れる人は減り、後発で同じ参道や駅前に出店している競合店にお客さまが分散したりと厳しい状況でした。まんじゅうも見た目に競合と大きな差がなく、どう戦うか戦略を立て直す必要がありました」と振り返る。

戦略を立てるに当たり、中川さんがまず行うのは「決算書を見る」ことだという。

「コンサルに入って、決算書にプラスのインパクトを与えられないのでは意味がありません。まずは決算書を読み解き、どこまでいけば損益分岐点で、どこまで売上を伸ばすのかなどを整理していき、『オーダー』と呼ぶ数字目標を確定させます。次にそれを実現するためにはどう改善すればいいかを考えていきます。甘養亭の場合、そもそもポテンシャルは十分にありました。みのぶまんじゅうという商品は後発の競合会社からも発売されていますが、甘養亭は本家でダントツの歴史があります。この店は約400年の歴史がある本家だと聞けば、普通の人はそこで買いたくなるものです。今回は、そのポテンシャルを正しく発揮できれば、結果はついてくるはずと考えていました。新商品を開発したり、新ブランドを立ち上げたりする必要はなく、その1点をていねいに行っていったのが、今回のチームです」(中川さん) …

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