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「食」の老舗企業の挑戦 ブランド開発とクリエイティブ

最高品質の「だし」の裾野を広げる新たなショップ

創業約280年の老舗乾物屋「八木長本店」が昨年日本橋にある本店をリニューアルし、今年は「DASHI SHOP」1号店を渋谷にオープン予定など、新たな施策を次々と打ち出している。いずれも高品質な「だし」を日常生活に浸透させ、日本の食文化を守り継いでいくための試みという。

リニューアルした八木町本店。空間デザインは建築家の長坂常さんが担当した。ビルの外観に合わせ、鰹節の断面の色の什器を開発。店内ではだしの試飲もできるようになっている。

「だしを引く」シーンが減っている

1737年(元文2年)、徳川幕府八代目将軍吉宗の頃に創業した「八木長本店」は、鰹節や昆布、しいたけ、煮干しなど、上質な高級素材を280年にわたり扱ってきた老舗乾物屋だ。近年新たな施策を立て続けに実施し、昨年9月に日本橋本店をリニューアル。今年中には新形態である「DASHI SHOP」の1号店を渋谷にオープンする。

その背景を、3年前から八木長本店9代目の代表取締役を務める西山麻実子さんは「世の中の流れが変わり、高級食材がこれまでと同じやり方では生き残れなくなった」と説明する。

「八木長本店は、元々銀座や日本橋の高級料亭にだし素材の乾物を卸してきた会社です。しかし1990年頃から高級料亭が減りはじめ、同時に女性の社会進出も活発になり、家庭で『だしを引く』という行為が減っていきました。その中で、高級スーパーやデパートに販路を転換するなどの路線を試みてきましたが、それがうまくいったとは言えません。同業者の多くは、商品をそば屋やラーメン屋用の大衆路線に切り替え、生き残りを図っていきましたが、私たちはあくまで高級路線を変えずに時代に合った新しい形にはできないかと考えていたんです」。

社長就任前、西山さんは20年以上百貨店向けの営業を担当しており、バイヤーからは「乾物は一番売れない商品」と言われたことさえあった。「その結論を絶対に変えたい」という思いで、食べやすい乾物せんべいを開発したり、液体のだしボトルを開発したりと新しい商品開発に力を入れてきた。栄養専門学校で非常勤講師として教えたり、海外講演をしたりと食育にも取り組んだ。そんな孤軍奮闘する西山さんに転機が訪れたのは6年前のこと。

「経済産業省、日本の食材の海外への販路拡大について話をしてほしいと依頼を受けました。そこで、海外には日本食ブームが訪れているにもかかわらず、海外に出回っている乾物は、ほぼアジア産だという現状を伝えました。日本茶や日本酒も同じです。もっと日本産のよさを伝える必要があると話したところ、会場にいたある女性に、同じことを考えている人がいるからぜひ会わせたいと言われたのです」。それが、後に本店リニューアルとDASHI SHOPプロジェクトを共に進める、THINK GREEN PRODUCE 代表取締役の関口正人さんとの出会いになった …

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