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まだ誰も体験していないコンテンツのフォーマットづくりに挑む

バスキュール

実際の野球選手と対戦する感覚を実感できる「VR Real Data Baseball」やリアルタイムで流星を観測するシステム「Meteor Broadcaster」など、自社開発の企画を多数送り出してきたバスキュール。共通するのは、「コンテンツのフォーマットからつくりたい」という考え方だという。

左から、バスキュール クリエイティブエンジニア 桟義雄さん、代表取締役社長 朴正義さん、エンジニア 武田誠也さん。手に持つのは、「VR Real Data Baseball」用のデバイス。

会社創立時からR&Dスタイル

バスキュールはR&Dを行う部門を特別には設けていない。しかし、2000年の創業当時の目的がそもそも「まだ世の中にない体験をつくること」にあり、会社自体がR&Dのために作られたようなものだと代表の朴正義さんは話す。創業当時から作りたいと考えているものは、一貫して「ネット上で多くの人が同時アクセスし、体験を共有し楽しめるもの」。その時々の技術を使ってそれを形にし、世の中に発信してきた。

「創業当時、ネット上でリッチなコンテンツといえばFlashだったので、Flash上で誰もが楽しめるマルチユーザーコンテンツを開発すべく、マルチユーザーサーバの自社開発から始めました。そんな発想でものづくりをするチームが少なかったので、業界内でバスキュールを知ってもらうきっかけになったと思います」。

その後も、SNSがメジャー化したタイミングではミクシィと一緒に300万人を巻き込むクリスマスネットイベントを開発するなど、必要に応じて他社とも連携しながら、10年以上同じテーマを追ってきた。「ネットで皆とつながって面白いことをしたいという思いが大きくなった結果、多くの人を動員するならテレビだろうと、2015年には日本テレビと新会社『HAROiD』を設立しました。視聴者参加型の番組や広告を開発するだけでなく、テレビとネットを繋げることで放送そのものをどう変えるかというテーマで取り組んでいます」。

バスキュールでは、「誰も見たことのないコンテンツを作り出すなら、その器となる新しいフォーマットや仕組みからつくろう」と考える。

「先のマルチユーザーサーバも、その上で誰でもコンテンツを作れるよう無償公開していました。テレビCMも、しっかりしたビジネスモデルや業務フローなどがあった上でのクリエイティブですよね。つまり、入稿から放映までの仕組みを毎回ゼロから組み立てなくてもいいようフローが整えられているから、クリエイターは15秒の表現に集中できる。でも、ネットにそんな枠はないので、リッチなコンテンツほど使い捨てになる。毎回スクラッチで作る(いちから全て自分たちでシステムを構築する)のは、お金も才能ももったいない」。

そう考えるようになったのは、エンジニアの文化に触発されたからという。

「エンジニアには、他の人も使えそうなコードを実装したら、オープンにしてどんどん使ってもらおうとする文化があります。その理由は、自分たちも先人が作ったプログラムソースを拝借して育ってきたから。同じ苦労はしなくていい、皆で知識を共有しながら全体で前に進んでいこうと考えます。元々僕は技術畑ではなかったので、そういう文化を知らず、最初のマルチユーザーサーバもクローズドにしようとしたら、『それってダサいですよ』とスタッフに言われて。そこから意識が変わりました」。

新しい体験づくりにあたり、忘れてはいけないのは、実際に体験してもらわないとその新しさは理解されないということだ。だから最初に自主開発で作り、見せている。HAROiDを立ち上げる前も、自分たちでテレビ番組の1時間の放送枠を買い、視聴者参加型インタラクティブ番組を実証するところから始めた。特定のクライアントのために開発した技術は他社の案件では使えなくなってしまう。それよりも、自社開発で自分たちが権利を持つ形でサービスを提供し、育てていくほうが面白いという …

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