いま世の中で話題になっているCMをつくっている人たちはどのように企画を考え、映像を作り上げているのか。第2回目は、KDDI au、UQ mobile、湖池屋、キリンなどを手がける篠原誠さんにインタビューします。
"おもかわいい"三太郎CM
足立:篠原さんの手がけるCMはどれも人気ですが、クリエイティブを考えるうえで大切にされていることは何でしょうか?
篠原:僕はもともとマーケティングが好きで、営業志望で電通に入りました。今もその感覚は変わらなくて、広告にとっての一番のゴールは「モノが売れること」です。CMは商品やサービスの価値を上げるためにつくられるものなので、それを達成することを常に考えていますね。CMをつくってモノが売れるとCMのフレームを継続することができて、それによって効果も出てくるので、そこは意識しています。
足立:どのぐらい「継続する」と、CMの効果を実感できるものですか?
篠原:商品によりますが、最低3年続けてようやく世の中に認知されるレベルだと思います。日本人は忘れるのが得意で、良くも悪くも飽きっぽいので、1年ぐらいでは人の記憶に残る感覚がありません。ただ、僕は長く続くCMをつくろうとしているのではなく、そのほうが僕が求めている「売れる」ことに繋がると信じているんです。
足立:たとえばauの場合は何を一番のポイントにして企画しているんですか?
篠原:auの三太郎は当初サービス広告ではなく、ブランド広告としてプレゼンしたものです。当時、iPhoneが各社で取り扱われ始め、各社の個性が希薄になり、全てが同じに見えるようになったと感じました。その中で選ばれるにはどうしたらいいかを考えたとき、若者は「何となく好き」なものを選ぶ傾向があると思いました。
そのとき僕がイメージしたのは、立食パーティでよく見かける光景です。こうしたパーティではやたらと盛り上がっている場所があって、そこには出川哲朗さんや鈴木奈々さんのような"おもかわいい"(面白い+かわいい)人が必ずいる。携帯電話市場では、そのポジションが空いていたので、"おもかわいい"をイメージして三太郎を考えました …