電通テックの商品開発ユニット「mikke design lab.(ミッケ デザイン ラボ)」の開始から3年、そのプロジェクトから、現在までに4つの商品が発売されている。
電通テックと企業の商品開発プロジェクト
企業が抱える課題をクリエイティブの力で解決するため、電通テックが商品企画やプロダクトデザインなどの提案までを「無償」で担当。その対価として製造または販売された商品売上げの一部をロイヤリティとして還元してもらうという新たな仕組みを構築したのが、本プロジェクトだ。
このプロジェクトが始まったきっかけは、2013年に電通テックが開催した「世の中ちょっとよくする展」だ。「スギ花粉」や「片づけ」など、多様なテーマとその解決のためのクリエイティブを、同社クリエイターが自由な発想で形にし、電通のエントランスで展示。その多くがプロダクトで、非売品ながら「どこで買えるのか」という問い合わせが相次いだという。
そこで、大阪産業創造館に話を持ち込んだところ、提案が急速に具現化。「大阪の中小企業とのコラボによる商品開発」が実現した。電通テックでは、かねてよりタカラトミーアーツと共同開発したガチャブランド「パンダの穴」を展開しており、そのロイヤリティビジネスの経験を、この仕組みにも取り入れている。
プロジェクト名を「mikke design lab.」と命名した後、大阪産業創造館が大阪の中小企業に公募をかけたところ、約70社が手を挙げた。その中から「技術があること、かつ販路をもっていること」を条件に10社を選んだ。さらに各社に課題などをヒアリングし、課題が明確だった6社に絞り込み、電通テック社内で公募をかけた。
「部署の制約などはなく自由参加で募集しました。1社に対して4~5人が手を挙げたのですが、アイデアは社内では選別せず、全てクライアントにプレゼンして選んでいただきました。いわば社内競合のような形ですね」と、同社クリエーティブセンター センター次長 小山一博さん。採用されたプロジェクトは、ロイヤリティ面を担当するコンテンツビジネスデザイン部とクリエイティブがコアメンバーとなって管理、進行している。
新たな販路の開拓に成功した商品
mikke design lab.では現在、4つのプロジェクトを形にしている。そのうちの1つが液状のり アラビックヤマトでお馴染みヤマトの「テープノフセン」だ。アートディレクター 岡田啓佑さんは「メモックロールテープ」という既存のテープ型付箋をベースに、「別の販路で売れる商品を」という課題に応えるべく、「テープノフセン」という新商品をつくりあげた。
従来のカラフルな色を活かし、若い女性をターゲット層の中心に置き、シンプルでコンパクトなカッターと店頭で目立つパッケージ、そして機能が伝わるネーミングを開発した。その結果、テープノフセンは「グッドデザイン賞2017」で特別賞を受賞。さらに文房具メーカーとしては唯一「グッドデザイン・ベスト100」にも選出されるという結果を残している。
三河屋製菓のえびせん屋台村シリーズ『たこせん』『パエリアせん』も、クライアントに新たな価値をもたらしたプロジェクトだ。「えび満月」、「えびみりん焼」という商品で知られている三河屋だが、その購入者が中高年層に偏り、東京での認知度が低いことを課題に感じていた。
アートディレクター 石原絵梨さんは若い女性にターゲットを絞り、屋台の味とえびせんべいをコラボさせるというコンセプトで、店頭に世界各国の屋台が並ぶイメージを提案。これはお菓子売り場での棚取りまでをも考えた企画である。双方が協力してネーミング、味、パッケージの開発を進め、1年半かけて商品化にこぎつけた。完成した「えびせん屋台村」は三河屋製菓がこれまで取引のなかった販路への開拓のきっかけになった。
この他にも、マグネットでくっつけたり、外したりできるハンガー「SLICE」(シンコハンガー)、洗顔やメイクなどに忙しいときに、髪にクセをつけることなくピタッとくっつくヘアアクセサリー「NECO NO TE」(イエルバ)が、現在商品化されている。
mikke design lab.の今後について、クリエイティブディレクター 生亀寿昭さんは次のように話す。「ロイヤリティビジネスは初期費用がかからないので、従来の商品開発と違って、企業側もチャレンジがしやすい。今後は大阪以外でも、全国の企業を対象に展開していきたいと考えています」。
mikke design lab.では、各クリエイターがこれまで広告で培った経験や知見を、売れる商品、伝わる商品開発に存分に生かしている。そして、このロイヤリティビジネスは企業とクリエイターが協業する新たな商品開発の形を示している。
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電通テック mikke design lab.
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