日本航空が小学生を対象にした次世代育成プログラム「JAL STEAM SCHOOL」を開始した。実現に向けて協力したaircordは、2カ月におよぶオリエンを経て、その後8カ月の企画制作期間をかけ完成したという。異色の取り組みの裏側にどんなやりとりがあったのか。
2カ月かけてオリエンを実施
日本航空は次世代育成プログラム「JAL STEAM SCHOOL」の運営をスタートし、初の授業を2017年11月25日に実施した。「STEAM」とは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、アート(Art)、数学(Mathematics)の5つの領域の頭文字からなる言葉で、最近注目を集めている、理数教育に創造性を加えた教育概念だ。
日本航空 コーポレートブランド推進部 ブランド戦略グループの今北恭平さんは、新たなプログラムを開始した理由を次のように話す。
「弊社はお客さまに最高のサービスを提供したいと考えています。飛行機をご利用されないシーンにおいては、それを実現するものの一つとして、長年パイロットやキャビンアテンダントによるお仕事講座や折り紙ヒコーキ教室など、次世代教育プログラムに取り組んできました。2016年11月には、この取組みを『空育®』としてリニューアルしましたが、『JAL STEAM SCHOOL』は、その一環として開発した新プログラムです」。
空育は、『飛行機を通じて「自分」の未来を考える』『交流を通じて「日本・世界」の未来を考える』『環境・宇宙を通じて「地球」の未来を考える』の3つをテーマにした体験型プログラムだ。そのテーマを踏まえつつ「JAL STEAM SCHOOL」は開発されているが、従来のプログラムとの明確な違いは、外部企業とのコラボレーションによって開発した点だ。
「これまでのプログラムで実施してきた、社員自身が直接語るという強みを生かしつつ、新しいことにチャレンジしたいと感じていました。そこで取引先から優秀なクリエイティブ集団と紹介いただいたaircordに声をかけたんです。空育のコンセプトはそのままに、彼らの持つ新しい考え方やテクノロジーなどの最新技術を掛け合わせることで、空育をさらに魅力あるものにできるのではと考えました。さらに、STEAM教育自体が今世の中で注目されつつあり、世の中のトレンド、今求められているものを発信したいという思いもありました」。
日本航空はaircordと企画を進めるにあたり、オリエンに多くの時間を費やしたという。日本航空 コーポレートブランド推進部 ブランド戦略グループ長の西澤宏章さんは、その内容を次のように説明する。
「我々はJALのブランド価値を高めることに取り組んでいますが、aircordには、企画を考えはじめる前に2カ月かけてブランド戦略の説明をしました。我々コーポレートブランド推進部のミッションは2つで、1つは社会とともに新しい価値を創造することで、社会に貢献をすること。最近の言葉で言えばCSVです。もう1つは次世代育成の観点で若年層の方と接することで、JALに早い段階から親しみを感じていただくことです。今回は結果的に次世代育成のプログラムになりましたが、我々が最初にお話したのはもっと上のレイヤーの話で、まず戦略や我々の目指すところを理解していただき、その上で何ができるかに落とし込んで行った結果なんです。背景にある戦略を伝えないまま、何をしたいかだけ話をすると、そもそも何がゴールだっけ?何が目的だっけ?という議論に陥りかねない。じっくり時間をかけ、まずは理解いただくことを重視しました」。
オリエンを受けたaircordの橋本俊行さんは「JALは歴史が深く、情報が膨大にある会社。JALの一員になる感覚でとことんやらないとご提案できないと思いました。aircordはイベントや空間でのクリエイティブを中心に活動してきた会社です。今回のようにブランディングに取り組むことも、プロデュースを軸に仕事をするのもこれが初めてです。ただその方向にも挑戦していきたいと思っていて、そこにちょうどJALとの出会いがあった。JALにとっても、aircordにとってもチャレンジのあるプロジェクトだったと思います」と振り返る …