トヨタ「ノア」の広告コンテンツとして制作された、新垣結衣の出演する縦型動画「#金曜日の新垣さん」。2000万回再生を突破し、ヒット企画となった。その背後にどんなプレゼンがあったのか、企画した電通の嶋野裕介さんに聞いた。
意外なB案が選ばれた
トヨタは2017年7月、ノアのフルモデルチェンジに伴い、女優の新垣結衣を起用したテレビCMと、スマホ動画コンテンツ「#金曜日の新垣さん」を組み合わせたキャンペーンを実施した。テレビCMでは、助手席に座る新垣結衣が、運転席視点の主観カメラに向かって「いろんなスタイルが変わり始めているよね、今。ノアのスタイルも変わったし。あなたも早く帰れるようになったじゃない」と話しかける。
「#金曜日の新垣さん」は、7月7日から9月1日まで毎週金曜日に公開され、自宅でくつろぐ新垣結衣との会話をさまざまなシチュエーションで楽しめるファン垂涎のコンテンツだ。
当初のトヨタからのオリエンについて、今回の企画を担当した電通の嶋野裕介さんは「一言でいえば、新しくなったノアがカッコよく、スタイリッシュになったと伝えたいという内容でした」と話す。企画を考えるにあたり、クリエイティブディレクターの澤本嘉光さんからは、「言葉を1個置こう」とディレクションがあった。
今世の中に刺さる言葉は何か?とチームで話し合い、嶋野さんが出したコンセプトワードが「休もう」だったという。働き方改革が叫ばれる中で、その方向性なら世の中の多くの人に刺さるのではないかと考えたのだ。また、休みの日に車で出かけようという広告的な提案にも落とし込める。そして、この言葉を企画化するにあたって、誰にこの言葉を言ってもらったら、購入検討者に最も効くかと考え、出てきたのが「ガッキー」こと、新垣結衣だった。
「この人に『休もう』と言われたら、ターゲットである30~40代男性が休んじゃう人は誰か?と考えたときに、新垣さんしかいないと思いました。そこでテレビではCMプランナーチームが、新垣さんを助手席に乗せ、助手席を主人公に話を展開する企画を考えていきました。『休もう』という時代を捉えたコンセプトを、大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』に出演して社会事象を生み出した新垣さんから発信してもらう設計です」。
とはいえ、プレゼンでは、「ノアがスタイリッシュになったことを伝える」王道のA案からまず提案されたという。新しいノアのスタイリッシュさを打ち出すために、ノアに乗っている人の生き方をカッコよく描く案だ。さらに、それまでノアが長年築いてきたファミリー車のイメージも大事にするため、スタイリッシュな父像を描く提案をした。
そして、B案として提案されたのが先ほどの「休もう」をコンセプトを打ち出してメッセージする案。コピーのみを大きく打ち出したグラフィック広告案などに続き、最後に提案されたのが、新垣結衣の登場する「助手席が主役」案だった。さらに、この新垣案にはデジタル&PR施策として、ユーザーごとのカスタマイズ動画案も一緒に提案された。これがのちの「#金曜日の新垣さん」の原型となった …