猫好きにはたまらない、いなば食品「CIAO ちゅ~る」のCM。企画したのは、今回の仕事が"初CD仕事"となった博報堂のコピーライター 神林一馬さんだ。プレゼンではVコンをつくり、細かい説明はしなかったというが、その理由とは?
ほぼノーオリエンからのスタート
「ちゅ~るちゅ~る CIAO ちゅ~る~♪」一度聞いたら頭から離れないBGMと、夢中で食べる猫のかわいい姿が印象的な、いなば食品「CIAO ちゅ~る」のCM。CMの企画を考えたのは、ブラックサンダー「黒いイナズマ」のWeb動画でTCC最高新人賞も受賞した博報堂の神林一馬さんだ。
同社の仕事をすることになったきっかけは、社内の先輩の自主提案だったという。「飛び込み営業が好きなちょっと珍しい営業の先輩がいて、さまざまな企業を往訪しては、うちでCMつくりませんか?と声をかけていたんです。そのうちの1社がいなば食品で、本人も忘れた頃にマーケティング課長からCIAO ちゅ~るというすごい商品が完成したからCMをお願いしたいと電話がかかってきたと聞きました」。
当時、神林さんは入社2年目。アサヒビールやファミリーマートなどナショナルクライアントのキャンペーンを担当していたが、クリエイティブディレクターの経験はなかった。
「僕の師匠で上司である内山正浩CDから、『猫の餌の仕事の競合があるんだけど、CDでやってみない?』と言っていただきました。内山CDは僕が1年目の頃から、お前は早くCDになったほうがいいと言い続けてくれて、コピーの100本ノックをやれと言われたことは一度もなく、世の中がこういう流れだから、ブランドはこうすべきと、戦略の考え方を教え続けてくれました。だから僕も、市場にどういうカミナリを落とせば物が売れるのかといつも考えるようになっていました」。
CMのオリエンは、ほぼ"ノーオリエン"に近く、要望は「CMでCIAO ちゅ~るを売りたい」、シンプルにそれだけだった。ここから神林さんが考えた戦略も、ごくシンプルだ。
「僕は猫を2匹飼っていますが、通常は床に皿を置いて餌をあげるので、飼い主は食べている猫の顔を見ることができません。でも、この商品は飼い主が餌を手で持ってあげながら猫の食べている顔を見ることができる画期的な"コミュニケーションフード"なんです …