人生を豊かにする生活にとけ込むデザイン
80年代後半、私が美大生の頃、デザイン業界は広告の仕事が全盛で、百貨店やファッションビルなどのキャンペーンが世の中のムードをけん引していくような躍動感のある時代でした。ポスターをデザインする仕事に憧れて、広告業界を目指す美大生も多かったのですが、私は迷っていました。
「ヨハネス・イッテン 造形芸術への道」展図録 (東京国立近代美術館他)
僕が卒業した日本大学芸術学部デザイン学科は、1919年創立の美術と建築の学校「バウハウス」(ドイツ)の影響を受けています。バウハウスで学んだ建築家の山脇巌さんが日本に帰り、日芸の基礎をつくったと聞きました。僕はバウハウスに行ったことはありませんが、日芸の授業にはその流れを汲んでいるもがありました。
例えば僕が1年生のときは1枚の紙に図面を引いて、切り貼りをして、星などの難しい立体物をつくるという課題が出ていました。このような授業を通してバウハウスを身近に感じるようになり、自分でも調べるようになりました。
その中で知ったのが、バウハウスで教鞭をとっていたヨハネス・イッテンという人 …