緑色に染まった数々のオブジェ。それらをよく見ると、SNSではおなじみのものばかり。クロレッツを食べてスッキリする気分をこんなビジュアルで表現してくれたのは、岩崎菜都美さんだ。
"インスタ映え"するモチーフを撮影
私は以前に、弊社が開発した人工知能クリエイティブディレクター「AI-CD β」を使った企画で、クロレッツのミントタブのキャンペーンにアートディレクターとして参加しました。そのご縁で、今回クリエイティブリレーに参加させていただきました。弊社はもともとクロレッツのCMを制作していますが、この依頼をいただいてからは新鮮な気持ちで臨むために、社内のクロレッツスタッフから話を聞かないように努めていました。
オリエンは「スッキリ」という言葉を使うことだけが決まっていて、他はほぼ自由、ということでした。普段の仕事は目的と方向性が明確に決まった上で制作しているので、「好きにつくっていい」と言われると何をしていいかわからなくて…。私の場合、自分の作風やテイストというものがなく、商品に都度合わせるというスタイルなので、私の中に"拠り所"がなかった。また、今回は上司や先輩がおらず、自分がCDの役割も担わなくてはいけなかったので、その分、少し緊張しました。
悩みながらも「スッキリ」をテーマに考えた案の中から選ばれたものは、自分の中にたまっているもの、言いたいことを一気に吐き出して、スッキリしようというビジュアルでした。表現のモチーフは「SNS疲れ」です。私はアートディレクターなのにインスタグラムなどSNSのフォトジェニックとは遠いところにいて、そういうのを見ているとむしろ疲れてしまう。そこで、そういう行為をシニカルな目で見ているようなビジュアルがつくれたらいいなと思ったんです。
この案を実現するために、インスタグラムで人気のある人たちのアカウントやキュレーションサイトなどをたくさん見て研究しました。SNS疲れをスッキリさせるために出した企画なのに、女の子の欲望の果てしなさにあてられて、眩暈がしそうになりました(笑)。例えばアイスやドーナッツ、浮輪、フラミンゴモチーフのストロー、動物のヒゲや耳がつくアプリなど、何を見せれば、"インスタ映え"を象徴するビジュアルになるかと注意深く見ていきました。
これらの立体物を実際にスタジオに並べてマスキングした後、塗る位置のラインをプロジェクションし、そこをボディペインティグを得意とするメイクさんが、一気に塗ってくださいました。私は普段からアナログ志向で、実際にものをつくって撮影する方が好きなんです。それに加えて、今回の現場は女性スタッフが多かったので、どうしたら"インスタ映え"を表現できるか、みんなでワイワイ楽しみながら並べていきました。
今回は諸事情によりテストなしの一発勝負だったので、全体を並べ終わるまでボリューム感がつかみにくかった。また塗って、撮影した後に想像と違ったらどうしようという不安もありました。でも、完成したものは自分が想像した以上に、綺麗な緑がスッと抜けるようなビジュアルになったと思いました。
今後も、今回のように現場の人たちが楽しんでくれるような仕事ができるといいなと思います。見る人が楽しい気持ちになることはもちろん、制作しているスタッフも楽しい気持ちでつくれば、最終的なアウトプットもいいものになるはず。そのことを信じて、今後も制作していきたいですね。
岩崎さんのこれまでの仕事
- AD/岩崎菜都美
- C/おのたかひろ
- 撮影/小泉菜美子
- CG/カワノミオ
- ST/鶴見紘子
- ペイント/佐藤健司
- PR/高橋浩一郎、古川久美子
- AE/髙柳邑、ファーマノフスキー茉彩